第7話 彼らも大精霊

 珀瑛ハクエイ様は、何度も何度も振ってから……最後に、私の頭をぽんぽんと撫でて下さった。まるで、幼児を扱うようだが……大精霊となれば、幾千の年月を過ごされた方のはず。私のような、元聖女であれど子供以上に赤ん坊と然程変わりないだろう。



「……本当に?」



 でも、あの可愛いらしいもふもふの精霊姿の……名残がほとんどなかった。非常に残念だが……もう、抱っこも出来ないのかと、少しばかりガッカリしてしまった。



「せやで? あいつらも、まだあんなナリやけど……立派な大精霊や」



 珀瑛様が指を向けると……あの『キャンピングカー』がほとんど跡形もなく、食べ尽くされていた。今は、あちらの大精霊の方々がガツガツと、最後の塊を召し上がっていらした。



『『『は〜〜!! 満足満足!!』』』



 とおっしゃったのは、食べ終わられたすぐ後で。


 御三方とも、私達の方に振り返ると……御三方は、珀瑛様のようにくるんと後ろに反転しながら飛んだ。



「いやはや、人間の女子おなごに助けられるとわ」


「けど、美味かった〜! おかわり欲しいくらい!!」


「……無理を、言っては、ダメ」



 赤い焔と岩石を彷彿とさせるような、お召し物と髪を持つ女性体。


 蔓草と花々をまとった、羨むくらいの体つきの女性体。


 元気なお声を上げたのは、水色の髪を持つ男性体だった。


 たしかに……珀瑛様と同じく、神々しいお顔立ちなので……大精霊だとよくわかった。



(けど、私……が)



 あの王族には役立たずだと烙印を押され、追放させられたのに……雲の上に等しい存在でいらっしゃる、大精霊方四体を……救った?


 それが、とても信じられなかった。



「ハクよ。誠に、この者はお主が連れてきたのかえ?」



 赤い女性体の大精霊様が、いつの間にか目の前に立っていらした。よくよく見ると、この方も自分にはない羨むくらいのステキな御体をお持ちだった。



「せや。俺にも、さっきみたいなのを食わせてもろたんや。美味かったやろ?」


「ほんにのぉ? 固いが、噛みごたえがあり……口に入れると蕩けるような舌触りに変化しおった。あれはなんじゃ? この世のものではないはずじゃが」


「……異界の、産物……です」



 どうにか、それだけ口にすると……赤い大精霊様は少し目を丸くしたが、すぐに妖艶に微笑んでくださった。



「……なるほど。我らを救ってくれたのか? ほんに、ありがとう」



 熱いと思いきや、珀瑛様のように温かな手の温もりに。


 また、涙があふれ……とうとう、私は大声を上げて泣き喚いてしまった。

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