第6話 もふもふは大精霊

 我慢が……出来ない、と言う感じに。精霊達は、『キャンピングカー』にかじりついていった。


 それから、もこもこの精霊の時のように……あちこちを食べ始めた。この美しい光景に不釣り合いなガラクタのゴミに対して、彼らは異常な食欲を見せて……食べ進めていく。


 ガリ、バリボリとか。


 ガジガジとか。


 カリカリカリ、とか。


 最初は少しずつ……けど、次第に精霊達は大口を開けて、食べ進めていく。



『……おいし〜』


『どんくらいぶりの飯ぃ!!』


『実に……美味じゃ!!』



 嘘偽り……のない言葉。


 私の召喚した……ゴミで、こんなにも喜んでいただけるだなんて、初めてで。


 また涙があふれそうになってくる。少し鼻がぐずると……ぽんぽんと足元で何かが触れる感触がした。



『おおきに、姉ちゃん』



 私をこの里に導いてくださった精霊だ。もふもふの感触が、聖服に触れるとなんとも言い難い感じだった。



「……私は、出来ることをしただけで」


『けんど。実際は俺やあいつらを助けてくれたことに変わらん。下手したら……俺らは消滅しとったわ』


「……え?」



 今はあのように、貪り食べていらっしゃる精霊達が……消滅?


 食事をしなかっただけで……人間のように、飢えていただけでも?


 成り立ちがわからない私なので、その実感とやらが特に感じ取れないが。



『ある日突然やったんや。この里の魔力が……吸い取られてったんは』



 精霊がおっしゃるには。


 ある日突然、この里に充満していた魔力が……いきなり吸い取られていったらしい。原因を追求しようにも、ゴミなども枯渇していた状態だったため、魔力が次第に薄れていくと……ほとんどの精霊が活動出来なくなったそうだ。


 せめて、里の外。人間達の世界から食糧であるゴミだけでも……と、限界を感じた精霊が探し始めたが。すぐに、魔力が切れたところ……追放された私の上に落ちて、今に至ると言うわけだ。



「……その原因は。未だ分からず……でしょうか?」


『おん。姉ちゃんの出してくれたもんで、腹一杯やけど。まだ回復したてやから無理やわ。大精霊・・・の俺でも』


「……………………え?」



 今、何をおっしゃった?


 このもふもふ可愛い精霊が……大精霊??


 精霊王に次ぐ、高位の精霊??


 びっくりし過ぎて、頭が混乱してしまった。


 私が呆気にとられていると……精霊は『ん?』と首を傾げられた。



『言っとらんかったっけ?』


「は……はい」


『ほんなら、本来の姿にも戻るわ!』



 精霊がくるんと、その場で宙を舞うように後ろに飛べば。


 その勢いと同時に、体がどんどん大きくなり……もふもふはなくなって、細長い尻尾とふさふさの獣耳。


 黒と銀の混じった、不思議な色合いの髪。


 私が見上げるのも大変な、男性体の体格。


 顔も出来上がると……思わず、見惚れてしまったほどの整った顔立ち。


 目を開けると……美しい金色だった。



「……精霊、殿?」


「これが俺や。珀瑛ハクエイ言うんよ。呼びにくいやろうから、ハクでええで!!」



 テレパシーでない、耳通りの良過ぎる御声も……私の心臓を落ち着かない状態にさせ。


 さらに、珀瑛様は……私の両手を掴んで強く上下に振って歓迎の意を示して下さった。

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