第5話 役に立てた聖女②
ぱたぱた、と精霊が私を置いていかない早さで向かった先は。
精霊が落ちてきた時と同じように……ぐったりとした、彼とは姿の違う精霊達が、洞窟のようなところで倒れているのが見えてきた。
「まあ!?」
これは大変だ。精霊が倒れる理由はよくわかっていないが、一大事だと言うのは私でもわかった。彼らにも……あのガラクタなどを食べさせれば、いいのだろうか?
『姉ちゃん! こいつらにも、あのうんまいの出したって!!』
「ですが……望み通りには、出ないと思います」
『大丈夫や! ちょぉ、こっち来て』
ちょいちょいと、屈むように手招きされたので……言われた通りに屈むと、頬に何かが軽く当たった。
「……これは!?」
その刺激を受けた直後。
体中に……魔力が満ちていく感覚があった。いつもの召喚魔法は、私自身の魔力のみで発動出来るが。
これなら……と、私は上空に両手を上げた。
『あまねく光! 光、光よ。我が身に宿る光を使え。彼の地とこの地を繋ぐ、綱となれ!!』
あふれんばかりの力を解き放てば……宙にはこれまでよりも大きな魔法陣が顕現した。
すぐに、私と精霊達の間の地面に降りて刻まれていくと、先程の召喚以上に強く光を発した。
『とこしえに結ぶ、盟約を紡ごう。我が望みを、今ここに召喚せん!!』
両手を強く振り下ろし、陣の中央にガラクタを顕現するイメージをしてみた。先程よりも、もっと大きくて……味が美味しいのであれば、極上のものであれと祈って。
そして……顕れたそれは。
私の予想をはるかに超える……とんでもないものが出てきた。
『な、なんやこれぇえええええ!?』
精霊が大声を上げるのも無理はない。
私も呆気に取られていたが……出てきたガラクタは、『乗り物』のような形をしていた。
【こちら、蒼の世界では廃車……ゴミ扱いです。キャンピングカーと呼ばれていました】
あちこちがぼろぼろで、とても動き出そうという感じではなかったが。
鑑定眼から得た情報では、そのような事が記されていた。
『……ん? なに?』
『何か……芳しい匂いがするのお』
『……な、に?』
倒れていた精霊達が、目を覚ましたようだ。
駆け寄っていいか、少し悩んだが……後ろにいた精霊に頷かれたので、彼らに少し近づいてみた。ふわもこの精霊とは違い、岩をまとったものや草の茂み、さらには水のスライムのようなもの。
「大丈夫ですか? 助け……にきました」
『……お主、何者じゃ?』
多分、岩をまとった精霊だと思う。顔を上げた時に、目が合ったからだ。声音から、少し年老いた女性体だと思うが……下手に警戒させてはいけないと私は小さく深呼吸をした。
「精霊殿に……あちらの方に、助力を求められて。この里にお邪魔した者です。ただいま、召喚魔法を扱いました」
『……ほぉ。お主が』
そして、他の精霊達とあの『キャンピングカー』と言うものを目にすると。
全員……ほとんど同時に、肩を震えさせたように見えた。
『『『いただき、まーす!!』』』
と、私がびっくりするくらいの大声を上げ。
三体同時に、あれにかじりついたのだった。
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