第4話 精霊の里へ

 波紋が、そのような場所にあるとは思わず。


 ここから……その。精霊が多く居ると言う『里』に行けるとは思えない。


 しかし……私が助けたらしい……精霊は、土で少し汚れた私の服を引っ張りながら……あの波紋に向けて手を伸ばした。



『ほら、ほら! 行くで、姉ちゃん!!』


「……私、なんかで。行っても大丈夫でしょうか?」


『俺が、皆を納得させる!! はよ行こうや!!』


「……わかり、ました」



 ゆっくり、と。手を伸ばして……波紋に少しだけ触れてみる。冷たくはなく、温かい。まるで、ぬるめのお湯に浸かった時のような。


 さらに、手を入れてみれば……とても温かで、もっと触れていたいと思い。


 我慢出来ずに、たぷんとお湯に浸かった感じはしたが……中に入っても息が出来た。



『ちょぉ、歩くで。俺にしっかりついてきぃ?』



 精霊が服の裾を掴みながら、ゆっくりと先導してくださった。


 中は真っ暗かと思ったが、奥にいくつか光の印みたいなのが見えた。あれのどれかが『里』だろうが、下手に迷子になっては、さまよう事態ですまないかもしれない。


 ひとつ、頷いてから……私も足を動かした。地面のような場所を踏むたびに、ぴちょんと水の波紋が広がっていくが……こう言う場所なのだろうか?


 あの籠の鳥のような生活をしていたので、わずかな常識程度ではさっぱりわからない。


 ゆっくり、またゆっくりと歩みを進めていくと……精霊がひとつの光の前で止まった。



『ここや! 姉ちゃんから先通って?』


「……良いのでしょうか?」


『おん! ほらほら!!』



 精霊の体が小さいので、背は押されることはなかったが。


 ここに居ては、何も出来ないので……私は言われるがままに、その光の中へと飛び込んだ。


 出口はすぐで、足には草の感触が伝わってきた。


 しっかり、地面を踏むと……光が落ち着けば、目に飛び込んできた光景に……たまらず、『ほぅ』とため息を吐いてしまう。



「……素敵」



 色とりどりの花達。


 多くの緑。


 その緑……樹々には、様々な見たことがない果物が自生していて。


 時折見える、岩かと思ったのは……宝石の結晶体だろうか? あの王国の城にいた時に見たのより……格段に大きい。あの王族達だったら、すぐに手を伸ばすほどの美しさだった。



『ようこそ! 精霊の里へ!!』



 精霊は私の足元で、えっへんと胸を反っていた。



「……素晴らしいところです」


『せやろ!! けんど、今ちょぉ……大変なんや。姉ちゃん、こっちに来て欲しいねん!!』



 精霊が来い来いと手招きされたので……私は何かの役に立てるのなら、とまた頷いてから彼のあとに続いた。

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