第8話 大精霊らの名前
「ね、姉ちゃん??」
「なんじゃ? 礼を告げただけで泣くとは?」
精霊様方に、ご迷惑をおかけしてしまっている。それがわかっていても……私は嬉しさ以上に……あの王家の者達にどれだけ感謝されずに、ある意味奴隷のように扱われていたことへの解放感と悔しさで泣き叫ばずにいられなかった。
どのような財宝を召喚しても、すぐに下がれと言われるだけで。
褒美以上に、労いの言葉も何もなかった。
大精霊様方よりは、美しさは劣れど……いくらかは憧れを抱いていた王太子殿下。彼とて、私を特に気にかけず……追放を宣言した時も、慈悲のひとかけらもなかった。
だからこそ、今目の前にいらっしゃる大精霊様方のおやさしさが……とても、心に響いてしまい、涙が止まらない。親から引き離された……幼い頃以来の大泣きだった。
「はいはーい? 可愛い顔が台無しだよ? 落ち着いて落ち着いて」
ふわっと……花のような、良い香りがした。
そして、体には柔らかな花が……いや、これは。
「だ、大精霊……様?」
「のんのん。私は
「い、いえ……それは」
大精霊様を姉のように呼ぶなどと、畏れ多い。
首を横に振ろうにもお胸を押し付けるように、頭を抱えられているため上手く身動きが取れなかった。
「つれないなあ? ま、下手に馴れ馴れしいヒトの子よりも可愛いけどね!」
「これ、緑斗。妾らにも触れさせよ」
「やーだ!
「加減は出来るわ、阿呆」
赤い女性体の方は、凰華様とおっしゃるようだ。あとおひとりを除いても、聞いたことがない響きのお名前でいらっしゃる。
「……緑斗。僕……にも、お礼言わせて」
そのおひとり……水の衣をまとった(内側は見えていません)男性体は……物静かな雰囲気でいらっしゃるが、怖いとは思えない。表情は固いけれど……少しだけ、優しさを含んでいる感じだった。
「いーよん? はいはい、どうぞ」
「なぜ、こやつには」
「凰華は強引そうだもん〜」
「……はじめ、まして」
おふたりを放っておかれて、水の御方は私に挨拶をしてくださった。お辞儀をされたので、緑斗様から離していただいた私も慌ててお辞儀をした。最敬礼をしようにも、まだ後ろにおふたりがいらっしゃったので無理だったのだ。
「は、はじめまして……」
「……僕は、
「翠雨様……」
「……助けてくれたから……別に様はいいよ」
「せやな?」
「そうじゃの?」
「そうだね!!」
「む、無理です!!」
これには流石に首を強く横に振った!
「ええのに。そいや、姉ちゃんの名前聞いとらんかったわ? 渡しの聖女とか意味わからん称号くらいやったなあ?」
珀瑛様がそうおっしゃると……他の御三方も聞きたいのか、それぞれ顔を輝かせていらっしゃった。
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