彼の彼女の青い春
@kinolove
第1話 彼と彼女の馴れ初め
「なぁ恭介。」
「んー?」
「ウチら付き合わへん?」
「・・・は?」
いつも通りの帰り道。
幼なじみの
「え、なに?お前俺のこと好きなの?」
「いやわからん。」
「おい。」
「ほら、あんまり自分で言いたくないけど、
ウチって結構男子に告白されるやん。」
「まぁそうだな。」
「いい加減鬱陶しくなってきてな。
いっそのことホンマに男作ったろう思うて。」
「男の一世一代の大勝負を鬱陶しいとか言ってやるなよ。
ていうかなんで俺?」
「どうせ付き合うなら一緒にいて楽しいやつがええおもてな。」
「そう言ってくれるのは嬉しいが・・・なんだかなぁ・・・。」
「別にええやん。
いくら小学校の頃から一緒におるいうてもアンタもウチのこと意識したことあるやろ?」
「まぁ、日に4、5回はあるな。」
「冗談で言うたのにまさかの高頻度やんけ。
・・・ちなみにウチのどんな所が気になるん。」
「胸。」
パァン。
「・・・なんでぶったの?」
「ごめん反射的に。」
「てかお前はどうなんだよ。」
「何が?」
「そんなこと言い出すってことは多少なりとも俺の事意識してくれたわけだろ?
結構長い付き合いなのにそんな素振り全然なかったじゃねぇか。」
「まぁそうやなぁ。
アンタだけ性癖晒すんは不公平やしな。」
「性癖言うな。」
立花は腕を組み考えてから話す。
「せやなぁ・・・。
恭介は巨乳好きの変態でデリカシー皆無なクソ野郎やけど。」
「よし死のう。」
「まぁ最後まで聞きや。」
どこかに行こうとする恭介を引き止めて立花は続ける。
「なんだかんだ男らしいし、いざと言う時はウチのこと守ってくれたりする所はかっこええと思っとるよ。」
立花がそう言うと、恭介は恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
「どしたん。」
「照れ隠しにも胸とかほざいた俺が情けなくて死にたい。」
「おう、悔い改めぇよ。」
恥ずかしがる恭介に、立花はイタズラが成功したように笑う。
「それで?まだ返事聞いてへんけど?」
「・・・嫌な女。」
恭介は立花の方を向くと、
呆れたように笑いながら言う。
「いいぜ、乗ってやるよ。
お前となら退屈しなさそうだ。」
「さすが相棒、話が分かる。」
そう言って2人は力強く握手した。
「で、付き合うって具体的に何するんだ?」
「・・・さぁ。」
#####
私立
1年3組教室。
「てなわけで恭介と付き合うことになった。」
「なっちゃいました。」
昼休み。
恭介と立花は中学生時代からの友人である
「なんて言うか・・・二人らしいふざけたくっつき方ね。」
「でも良かったよ。
やっと2人がくっついて。」
「そうね。
まぁ、アンタ達は昔から距離が近すぎてくっついてないのがおかしいくらいだったけど。」
「でも正直ウチら、付き合うってことがどういうことかようわからんねん。」
「そこで、中学時代から付き合ってる我が校きってのバカップルふたりに色々聞きたくてな。 」
「バカップル言うな。
アンタら人に物を頼む態度って知ってる?」
「まぁまぁ刹那。
せっかくだし手伝ってあげようよ。
友達なんだしさ。」
「アンタはただ面白がってるだけでしょ?健人。」
「はははは。」
「笑って誤魔化すんじゃないわよ!」
刹那は溜息を吐いてから2人に聞く。
「で、アンタたちは何が聞きたいの?」
「付き合うって具体的に何したらいいんだ。」
「う〜ん、そうだねぇ。
やっぱりデートじゃないかなぁ。」
「2人でなら何回も出掛けた事あるで?」
「夏は2人で海とかにも行ったよな。」
「じゃあ家デートとかは?」
「家が隣同士やし、しょっちゅう遊び行くで?」
「1回こいつのセーブデータ消したらめちゃめちゃキレられた。」
「あぁ、あの時は殺してやろうかと思ったわ。」
「俺のゲームじゃろがい。」
「・・・お泊まりとかはしてないわよね?」
「え?アカンの?ウチの家にこいつ用の歯ブラシとか食器とかあるけど。」
「同じく。」
「アンタら本当に昨日付き合ったばっかなの!?」
「そりゃ付き合ってからやることなくなるわけだよ。」
2人の距離感の近さに、健人は苦笑いになる。
「あ!じゃあ手は!?手は繋いだことある!?」
「手を・・・。」
「繋ぐ・・・。」
・
・
・
バンッ!
「かかってこいやああああ!」
「やったらああああああ!」
「いやなんでそこで腕相撲が始まんのよ! 」
「おらぁ!」
「ぎゃあ!」
「そんで恭介負けてるし!」
「やべぇよ健人、教室にゴリラ放たれってるって。
猟友会呼んだ方がいいぞ。」
「よく見て恭介、そのゴリラは君の彼女だよ。」
「あらやだほんと。」
「なぁ、刹那。
アンタの男さらっとウチのことゴリラ扱いしてくんねんけど、どういう躾してんの?」
「残念だけど立花。
片手で男との力比べに勝つような女は十分ゴリラよ。
てか結局手繋いだことあるの?」
「人が多い所だとたまに。」
「迷ったら厄介やしな。」
「ああ、じゃああれは?
恋人繋ぎ」
「恋人繋ぎって・・・あの?」
「そうそう、こんなふうに。」
健人は隣にいた刹那の手の指に自分の指を絡ませるように握る。
「こんな感じのやつ。」
「ちょ・・・ちょっとやめてめよ人前で恥ずかしい////」
「えー、いいじゃん。
いつもやってる事でしょ?」
「それはそうだけど。」
「おい、俺らダシにしてイチャついてんじゃねぇぞ。」
「おっと、ごめんごめん。」
「でも恋人繋ぎか・・・さすがにウチらもやった事無いかもな・・・やってみるか。」
「まじですか立花さん。」
「恭介、手ぇ出して。」
「はいよ。」
2人は正面で向き合うと、先程の健人と同じように恋人繋ぎをする。
(・・・恭介の手ってこんな大きいんや。
指も太くてゴツゴツして男らしいっていうか・・・なんやろちょっと顔熱くなってきたかも。)
「・・・立花・・・お前。」
「な・・・なに!?」
思考中に名前を呼ばれ、少し驚く立花に恭介は笑っていう。
「こうやって見ると綺麗な指してんだな。」
「っ!////」
その瞬間立花は顔を赤くして繋いでいた手を離す。
「え?もうお終い?」
「じゅ・・・充分握ったやろ!」
「いや、俺としてはあと4〜5分握っときたかったんだけど。」
「うっさいわ!アホ!変態!おっぱい星人!」
「失礼だなぁコノヤロウ!事実だけど!」
「あぁ、そこは認めるんだ。」
恭介を罵倒しつつも照れている様子の立花を見て、
刹那はクスリと笑う。
「まぁ、アンタたちなら上手くやって行けるわよ。」
「そうだね。
俺達からしたら納まるところに納まった感じだし。」
「まぁでも、それでも不安なら頼りなさい。
アドバイスくらいらしてあげるから。」
「すまんな、恩に着る。」
「いいのよ・・・珍しいものも見れたしね。」
そう言って刹那は立花を横目で見る。
「な・・・なんやその目は。」
「べっにぃー?」
その様子にに少しイラついた立花だったが、次の瞬間には意地の悪い笑みを浮かべる。
「それなら早速教えて貰いたいんやけど。」
「なに?」
立花は机の上で両肘をついて両手を顔の前で組む。
「2人の初体験について聞きたいんやけど。」
「っ!!ゲホッ!ゲホッ!」
刹那は驚いた拍子に飲んでいたジュースが気管に入り大きくむせた。
「い・・・いきなり何言い出すのよあんた!」
「いや、普通は付き合ってどれくらいでするんか気になって。
今後の参考にしようかなって。」
「だからって・・・ちょっと恭介!アンタの彼女どうにかしなさいよ!」
「なんでも教えてくれるって言ったよな。」
「一言も言ってないわよそんなこと!」
「えーっと、あれはいつ頃だったかなぁ。」
「その口を閉じなさい健人!」
取り乱す刹那に立花は近づき、刹那の背後の壁にドンと手をついて逃げ道を塞ぐ。
「ほら、刹那の初めて・・・聞かせてや?」
「そ・・・そんなの・・・言えるわけないでしょ・・・。」
顔を赤くして目を逸らす刹那と、更に顔を接近させる立花を男二人は少し離れたところで見ていた。
「なぁ、今あそこに割り込んだら俺もガ〇アみたいになるのかな?」
「さぁねぇ?
まぁ、片方が自分の彼女なら例外だと思うよ。」
そう言って健人は2人近づくと、立花の方を優しく掴んで刹那から引き離す。
「立花、そのへんで勘弁してあげて。
ていうかこれ以上百合の花咲かせないで。
彼氏の立つ瀬無くなるから。」
「なんや健人、これからやったのに。」
「ていうか健人!
もうちょっと早く助けに来てよ!」
「いやぁ、詰められてる刹那が可愛くてつい。」
「ついじゃないわよ!
楽しんでんじゃないわよバカ!」
健人が喚く刹那の頭を宥めるように撫でていると、
昼休み終了のチャイムがなった。
「さぁて、刹那からかって満足したし。
次の授業の準備するか。」
「立花、次の授業なんだっけ。」
「確か数学やな。」
「やべぇ教科書忘れたわ。
・・・君のを見せてくれないかいハニー。 」
「ダーリン、アナタと私の席は離れてるのよ?
貴方が教科書を持っていたら私はどうすればいいの?」
「気合いで何とかしろよ。」
「根性論も大概にせぇよ貴様。」
立花と恭介の茶番を見ていた刹那と恭介は、
そのやり取りについ笑ってしまう。
「何はともあれ祝福するよ、お二人さん。」
「アンタ達お似合いよ、周りに嫉妬されて刺されないようにね。」
2人がそう言うと、恭介と立花は見つめ合うと微かに笑いあった。
#####
放課後。
立花と恭介は2人で並んで歩いでいた。
「しっかし、いざ付き合ってみると付き合う前とあんまし変わらんなぁ。」
「そりゃお前、海行ったり、お互いの家泊まったり、付き合ってからのメインイベント大体こなしてたらそうなるわな。
むしろ、付き合ってからしか出来ないことってなんだよ。」
「んー・・・。
恭介、ちょっと手ぇ貸して。」
「ん?ほい。」
言われるがまま手を差し出すとその腕を掴み。
「おりゃ。」
ぽむっ。
その手の平を自分の胸に押付けた。
「うお!?」
恭介は驚いて咄嗟に手を離した。
「イカれてんのかお前!」
「なんや、普段は平気で下ネタ言うくせに耐性ないんやな。」
「いや誰でも驚くわ!
恥じらいを持て恥じらいを!
てかデッカ!そんで柔らか!
何お前、胸部に低反発枕でも装備してんの!?」
「いやしっかり感触楽しんどるやないか。
流石にこういうのはただの友達やったら出来ん事やろ?」
「確かにそうだけど色々すっ飛ばしすぎだろ。」
「いろいろって?」
「まずは・・・これだろ。」
そう言って恭介は立花の手を取ると、恋人繋ぎで握る。
「・・・////」
立花は顔を微かに赤くしながら、恭介の手を握り返す。
「いやお前胸触らせるのは平気なのになんでこれで照れるんだよ。」
「いやその・・・」
立花は照れながらも話し出す。
「ウチにとって恭介は隣に居るのが当たり前な兄妹みたいな存在やった。
だからあんまし意識したこと無かったけど。
でもこうやって手ぇ握ってみると、大きくて頼もしいなぁって思って・・・。」
立花は恭介に向かって照れ笑いを浮かべて言う。
「結構、ドキドキしてる。」
「・・・そっか。」
・
・
・
二人の間に妙な空気が流れるが、
「・・・フフ。」
「・・・クッ。」
「「あはははははは!」」
少しして2人は大声で笑いだした。。
「なんやねんこれアオハルか!」
「ほんとそれな!俺達らしくも無ねぇ!」
2人はしばらく笑っていたが、立花が目尻の涙を指先で拭ってから顔を上げる。
「・・・なぁ恭介、デートしよか。」
「デート?」
「そう、幼なじみじゃなくて恋人としての初デート。
悪い話じゃないやろ?」
「いいね、どこいくよ。」
「いつもどうりそこら辺ぶらつけばええやろ。
あ、でも最近できたプラネタリウムは行きたいかも。」
「飯は奢るぞ?バイト代も入ったしな。」
「いやそこは割り勘で。
ウチはあんたとは対等でいたい。」
「よし決まりだ。
・・・そんじゃあ帰るか。」
「せやな、フフ。」
「どうした?」
恭介の言葉に、立花は彼の顔をのぞき込むように笑顔を向ける。
「やっぱりアンタ選んで正解やったわ」
「はは、そりゃあ光栄だな。」
2人は握った手に僅かに力を込めると、自宅に向かって歩いていった。
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