第一巻 発売記念『キミがいるから』
救世主タケルが現れてから、人間勢力は魔王軍に対抗し始める。
しかしそんな対抗は無駄だと言わんばかりに、魔王軍は、未曾有の大侵攻を開始した。
王国軍だけでは止めることで精一杯の中、タケルは単身で敵司令官の撃退に向かい、そしてそれを成し遂げた。
王宮のタケルの部屋、ボロボロのタケルとエーデルワイスがソファで横並びに座る。
タケルが怪我をして、エーデルワイスに治療をされていた。
「タケル? またずいぶんと無茶をしたらしいですね?」
にっこり笑って圧を賭けるエーデルワイス。
気まずくて顔を背けるタケルが「してません」と小さく呟く。
タケルの顔面を掴んだエーデルワイスが笑顔で顔を向けさせる。
ゴキゴギと、人体からなってはいけない音とともに。
「っ――!」
二人が真正面で見つめ合う形になる。
じとーと見つめるエーデルワイスと、焦ったように言い訳をするタケル。
「今回の作戦、本当はタケル一人にあんなに負担をかけるモノじゃなかったはずでした」
単身の特攻を提案したのはタケルだった。
彼としては、王国最大戦力である自分が突撃すれば、全体を一気に押し上げる事が出来るということ。
なにより、王国民の被害を減らすことが出来ると思っての行動だ。
だがそれはとても危険なことで、エーデルワイスが泣きそうな顔をする。
「どうして貴方は、無茶ばかりするんですか?」
「いや、俺がやらないと子どもたち危なかったし……それに」
タケルがエーデルワイスに優しい笑顔を見せる。
「どんな大怪我しても、ちゃんと帰ってきたらエーデルワイスが治してくれるだろ?」
「なっ……」
それを聞いた瞬間、エーデルワイスが俯く。
「……背中向いて下さい」
タケルは顔を紅くしているエーデルワイスに気付かず、怒っているんじゃないかとドキドキしながら背中を向ける。
――だ、だから無茶じゃない、かなぁ……なんて。とタケルは小さく言い訳。
そんなタケルの背中をエーデルワイスがバチンと叩く。
「いたいっ――!」
「それが無茶していい理由にはなりません! 死んだら終わりなんですからね!」
それだけ言うと、彼女は立ち上がり、扉から出て行った。
「お、怒らせちゃった……?」
タケルはそんな心配をし、当のエーデルワイスは――。
扉の裏で、ドクドクと動く心臓を押さえ、心の底から恥ずかしそうに手を顔に当てる。
その姿は、誰がどう見ても恥ずかしがっている恋する乙女そのもので――。
「ちゃんと『私のところに』帰ってくるなら、いくらでも治してあげますよ……」
「聖女様、お顔が赤いですが大丈夫ですか?」
「っ――⁉」
廊下を走っていると、通りすがりの侍女顔の赤さを指摘されるのであった。
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【単行本 発売✨】
この作品の『コミックス』が発売しました!
滅茶苦茶良い感じにしてくださってるので、良ければぜひ読んでみてください!
▼表紙
https://kakuyomu.jp/users/heisei007/news/16817330653321587641
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