第42話「少女の轍」
【同日 18時20分 渚輪ニュータウン 北部】
時刻は日没へと近づき、未だ青い空も幽かに赤みを灯し始める。
「くっ……地図を見る限り、これ以上北にある施設なんて斜目総合病院か、」
「あとはコスモリアランドくらいしかないぞ」
綴 「きっと病院に違いありませんわ」
礼音 「うむ、そうだろうな。よもや本当に北へ向かったのか、怪しくなり始めていたが、病院と聞いて納得だ」
「ああ、僕ももっと早くに気付くべきだった。少しでも医療品が整ってる場所への潜伏を狙ってたんだろうな。渚輪ニュータウンには斜目総合以外に目立った病院はないみたいだし」
綴 「なんとか宛てはたちましたね」
礼音 「だが急ごう。来栖崎くんを説得し連れ帰れたとしても、夜の街で我々が感染しては元も子もない」
「ですね。斜目総合まではここからは一本道ですし、一応周りの建物も確認しながら急ぎましょう」
アド 「──いや、サンちゃん違うかも……」
走りだす直前、アドが地図を眺めたまま凍るように呟いた。
「違うって……アド、どういうことだ?」
アド 「コスモリアランドだよ……」
ぽろり、と。 アドの右目に涙が伝う。
アド 「……ヒサギン……コスモリアランドに……向かったんだよ」
「待て、話が見えないんだが」
アド 「絶対……絶対だから!」
「アドっ……おまえ」
アド 「サンちゃん、行こう! 時間がないよ! コスモリアランドに絶対だから!」
「……分かった。急ぐから。道中に説明してくれ」
僕より長く一緒だったアドが断言するのであれば、反論する理由もない。
僕らはアドの判断を信じて、コスモリアランドを一点に目指す。
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