第41話「ヒサギン救出大作戦5」

【同日 18時10分 渚輪ニュータウン 北垓三通り】


アド 「サンちゃんはさ……。サンちゃんはなんでそこまで、ヒサギンを助けようとしてくれるの?」

   「らしくない……変な質問だな」

アド 「ん、ごめん。でもサンちゃん、昼にヒサギンに血を飲ましてからさ、ちょと……雰囲気変わったよ」

  「変わった?」

アド 「強くなったていうか。ちょっち人が違うみたい」

礼音 「うむ。確かにそれは私も思うところだ。凛々しくなったと感じるな」

  「気のせいだと思いますけど……。でも、来栖崎を迎えにいくのは当然ですよ」

礼音 「人助けか?」

  「違います、そんな高尚なものではありませんよ。だって来栖崎は……こんな僕ですら必要としてくれたんです。不可抗力だとしたって、命を掛けて守る価値を、僕に見いだしてくれたんです」

アド 「サンちゃん……」

   「記憶もない僕にとって、来栖崎の存在は、世界との結び目なんですよ」


笑ってみせた僕の表情に、周囲がどんな感情を抱いたかは分からなかった。


礼音 「寂しいことを言うな、サンくん」

   「礼音さん……?」

礼音 「今や君の結び目は一つじゃない。少なくとも、ここにいる女は皆、そう思っているはずだよ」

アド 「そーだぜぃサンちゃん。寧ろ、その結び目を守る結び目さ! あたしらは皆、雁字搦めだ!」

綴   「やや端ないですわよ、樽神名さん。サン様もあのようなテクニカルチンパンジーは相手にせず、わたくしとの結び目を大切にしてくださいね」


僕は笑いかける皆に、「ありがとう」とだけ返した。

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