第40話「ヒサギン救出大作戦4」

【同日 18時05分 渚輪ニュータウン 北垓三通り】


   「随分北に来たけど……、まだ北に向かってるのか」

礼音 「真新しいゾンビの死骸が残り続けている以上、来栖崎くんは間違いなくここを通ってるんだろう」

   「本当に常軌を逸した速さだな……。身のこなしが普通の女子高生の粋を超えている」

アド 「そりゃヒサギン、剣道の全国大会準優勝者だもん」

  「まじか……」

アド 「しかも、高校生の部じゃないぜ。大人もいる公式戦」

   「更に剣道三倍段ってか……天才っているんだな」

礼音 「サンくん。結果を出しているものを、安易に『天才』と評するのは尊敬に似て軽蔑だ」

礼音 「本人の前では決して言わないことを、おすすめするよ」

  「……ありがとうございます」


■■─────────バトル────────■■



  「だめだッ。ここもちがう!」

アド 「さ、サンちゃん壁殴っちゃダメだよ!」

   「あぁ、すまない……。先を、……急ごうか」

礼音 「その前に手を貸せ、サンくん」

  「えっと……一人で歩けますけど」

礼音 「いや違う。血が出てるぞ」

礼音さんは自らのスカートを破り、僕の掌に巻いてくれた。


礼音 「君まで感染しては意味がない。悲しむ者は、もういるぞ」

   「……ありがとうございます」


来栖崎に噛まれても感染しなかった事実を、忘れているのか、

或いは──来栖崎を人間側だと思ってくれているの、か。

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