第9話「文明の残香」


【同日 11時25分 渚輪ニュータウン 日々宮通り】


アド率いる戦闘班の群れにまじり、僕は周囲を警戒しながら歩いた。

    「文明ってのはこうも簡単に……滅びるんだな」


俄には信じがたい事実も、眼前の廃墟群を見れば納得せざるを得ない。


アド 「新入り君。記憶がなくてもショックは受けるもんなんだね」

   「ん、ああ確かにそうだな……多分、『水を飲まなければ喉が乾く』みたいな知識は残ってるんだと思う。だから昔の街並までは覚えてないけど……社会が機能していた頃の知識はある。絶対とは言い切れないけどな」

アド 「なるほどねん」

栗子 「おいおい、一応は敵地なんだから悠長に会話してっと殺されんぞおめぇら!」

ゾンビ 「ォゴゴゴ」


先導するチームが叫ぶと同時に、数体のゾンビを進行方向に確認した。


アド 「避けて通るほどじゃないからみんな! 抗戦準備だよ!」



■■─────────バトル────────■■



アド 「ふぅ。他愛もない野郎どもだったぜ」


アドは往年のギャングよろしく、タバコの煙をふかすフリをした。


ひさぎ 「急がなくていいのかしらー? 間に合わなかったら骨折りゾンビの草臥れ儲けよ」

アド 「……え、ヒサギン、今のもしかしてダジャ」

ひさぎ 「う、うっさい! なんでもないわよ! なんでも!」

礼音 「ふふ、たまに来栖崎くんは可愛いくなるな」

ひさぎ 「あ? 殺すぞ年増ンドリル」

礼音 「……としまんどりる」

アド 「そ、総員ー作戦にしゅーちゅーしゅーちゅー!これよりはちょいちょいゾンビと遭遇するけどめげずに驀進せよー」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る