第二章 終末の過ごし方

第8話「食料調達作戦」


【翌日】


6月7日 10時45分 デパート9F 中央会議室


アド 「てすてす、マイクてす。 おぅ、いぇ、あ、あーあー……よし。集まってくれやがった皆のしゅーよ、聞くが良い!」


ポートラルの面々が冷めた顔で見守るなか、

アドは電源の入っていないマイク片手に熱弁を振るい始めた。


アド 「東にイチゴケイクがあると聞けば東へ! 西にチーズケイクがあると聞けば西へ! 東方西走縦横無尽! 甘味のためならゾンビが何ぞ、欲しがりますぜ負けるまでは! それが樽神名アドというあたし! ──ってなわけで第142回『古今東西珍味収穫の旅』の開催決定だぁ!」

やちる 「普通に食料調達っていうべき……」

栗子 「いやナンバリングすら毎回テキトーだからなこいつ」

アド 「ふっふふー、細っちーこと気にしてる女子はモテないぜぃ!」

一同 「誰にだよ」


男はもういなかった。 僕を差し置いてだけれど。


アド 「さぁささ、白けない白けない! 甘味が我らポートラルをきっと待っている!」

アド 「阿呆は寝て待て、賢きあたしらは前進あるのみ! ──『ポートラル戦闘部隊』出動準備を開始せよー!」

一同 「ういー」

  「……」


毎度このテンションで運営しているのか……。 僕は少しだけポートラルの未来を按じた。


  「あの、三静寂さん?」


僕は小声で尋ねる。


礼音 「ん、礼音で構わない。なんだ?」

   「礼音さん。その……食料調達ってなんですか?」

礼音 「っとすまない。樽神名は説明無精が過ぎるな。 食料調達というのはだな、読んで字の如く、私たち戦闘班で食料資源確保すべく、デパートの外に出るのだ」

  「で、デパートの外って、街にですか?」

礼音 「無論だ。だが按ずることはない。外にはゾンビがうようよいるが、接触を避けるよう注意して前進すれば、遭遇する個体も少ない。遭遇したとしても一体一体相手取るだけなら、 油断さえしなければ負ける敵ではないよ」


負ける敵ではないって……良い笑顔で言ってくれる。

僕は昨日の怪物を思い浮かべ、身震いした。

『ポートラル』の少女たちは皆ゾンビが怖くないのだろうか?。

それとも僕がただ、臆病者過ぎるだけなのか?。


礼音 「ポートラルには常時30人近い人々が暮らしているからな。デパートにも備蓄がないではないが、食料難は生産業の停止したこの島の常だ。有限の備蓄を当てにせず、食料を定期的に街へ調達しに行く任務は必須だよ」

   「……アテはあるんですか?」

礼音 「山菜刈りなどもたまにする」

  「多彩ですね」

礼音 「だが今日は野草集めじゃあないだろうな」

  「と言うと……」

礼音 「まぁ、楽しみについてくるといい。 君の活躍には期待してるぞ、少年」

僕が《戦闘班》の一員であることを知ったのは、この時が初めてであった。

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