第4話「生き残り」
同日 13時35分 渚輪ニュータウン 第十三区
アド 「今から3ヶ月前のことだぜ……世界は唐突に滅んだのさ」
移動中、アドは演技掛かった調子で言った。
「滅んだって……」
アド 「ふっふふー。『世界が滅んだ』っていうのは大袈裟だったかもしれやむ」
アド 「この渚輪ニュータウン全域で、爆発的感染(パンデミック)が起きちゃったのさ! ぱんでみっく!」
「パンデミックて……鳥インフルエンザとか?」
アド 「違う違う、そんな可愛らしいウイルスじゃないよ」
アド 「感染経路は──『接触』『血液』『飛沫』『空気』『経口』に果ては『ベクター』までと、殆どの経路を持ち、」
アド 「感染力はインフルエンザの100倍超」
「……なッ」
アド 「潜伏期間はほぼ無しで、感染後の死亡率は100%の──超強毒性のウイルス」
アド 「しかも大気中でも病原性が全く死滅しなーいない!」
「そんな……」
「自然界で許されていいウイルスの枠を超えている……」
「……もしニュータウン外部に漏れれば……本当に世界が滅んでもおかしくないぞ」
アド 「ウイルスの説明はね、それだけじゃないのですぜ少年くん」
「それだけじゃない……?」
アド 「そのウイルスに感染するとね、死亡後必ず──」
アド 「──殺人衝動に忠実なゾンビになってしまうのです、はい」
「ゾンビ……? じゃ、じゃああのバケモノは」
アド 「そ、元はこの『渚輪ニュータウン』の人間だよ。元はね」
あの化物の元が人間……?
おいおい……本当にいったい、世界はどうなってしまったんだよ。
「なら、何故僕は……」
「……いや、樽神名たちだって感染してないんだ?」
アド 「ふっふふー。そこがお味噌話」
アド 「感染するっていっても、あたしら女性は──」
ゾンビ 「ゴゴゴゴゥゴゥ」
ひさぎ 「──アド背後ッ! ゾンビに狙われてるわよッ!」
■■─────────バトル────────■■
アド 「っとぉ、おおー! いかんいかん!」
アド 「危うく噛まれるところだったぜー、ありがとヒサギン!」
ひさぎ 「アンタが死んだら……皆から恨まれるの私なんだけど。 自覚もちなさいよ」
アド 「もつもつ、超持つ! もはや自覚大魔神!」
来栖崎は刀にこびり着いた液体を振り払いながら、樽神名を睨んだ。
ゾンビに対して怖じる気配も全くないし。 この少女、凄まじいな。
アド 「んでー、話の途中だったぞね少年くん!」
「お、ああ。そうだな」
アド 「このゾンビウイルスなんだけど、何故かあたしら女性、それも若い女性にゃ免疫があるみたいなんよさ」
「若い女性にだけ……?」
アド 「そ。二十代前半くらいまでなら無問題なのさ」
アド 「あ、でも血液感染だけはOUTッ」
アド 「直接噛まれちゃうと感染しちゃうから、注意は必要だけどねん」
僕は理解する。
二人の女性が何故僕をみて驚いていたのかを。
アド 「少年くん──」
アド 「──君は『終わり』が始まって以来、初の男性の生き残りだよ」
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