第7話 告白

「その遠距離の彼氏を諦めて、僕の方に来ませんか?」

 エレベーターの中で水島さんがぽつりと言った。

「え?」

「僕が彼氏だったら、斬島さんを置いて行くなんてできませんよ」

 そうだ。私は派遣だし、実家を出てしまっている。もし、相手にその気があればいつでも結婚できるんだ。確かに説得力のない設定だった。

「でも・・・」

「僕は諦めません。ずっとお誘いしますから。おやすみなさい」


 相手が誰であれ嬉しかった。今まで生きて来て、そんな風に言ってくれる人はいなかった。私に一目ぼれしてくれて、彼氏がいても奪い去ると断言してくれる人なんて・・・。あんな顔じゃなかったらなぁ。ここで決めるべきなのか、もっと探すべきなのか、どうすべきなのか自分でもわからない。


 私はあるネットの掲示板で相談した。

『全然好きじゃない人に告白されて迷っています。特に顔が好みではなく、生理的に受け付けない感じです。でも、人柄はいいと思いますが、お金はなさそうな人です。今婚活してますが、全然うまくいきません。理想は高くないと思いますが、この人ならギリギリセーフという人にも振られてしまいます。どうしたらいいでしょうか』


『とりあえずキープ』


 このわかりやすい回答に私は飛びついた。

 そうだ。婚活を継続しつつ、誘ってくれるうちは会うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る