第2話 手紙
『僕は水島祐介といいます。フリーランスのライターをしています。前から305さん(お名前がわからなくてごめんなさい)のことを見ていて、一目ぼれしてしまいました。こんな風に手紙を差し上げてきっとびっくりしていることと思います。僕は35歳独身です。よかったら友達になってください。ちょっと恥ずかしいけど写真を送ります。よかったら、メールください mizushima@xxxx.ne.jp』
メールか。珍しくな、と思ったけど、写真を見たら知的で爽やかだった。フリーランスのライターって、年収はどのくらいなんだろう。お金なさそうだな。でも、試しに連絡してみよう。
私はすぐに、水島さんにメールを送った。
『はじめまして。斬島のりえです。私は34歳の派遣社員です。水島さんは近所に住んでいる方ですか?私のことを知っててくれてるなんてびっくりしました』
それから、今の職場は〇〇駅だとか、ライターってすごいですねなんてことを少し書いた。私は男の人といても話が盛り上がらない。ずっとお金がなくて、旅行なんか行ったことがないし、お酒も飲まないから、仕事のことくらいしか話題がない。趣味はインディーズバンドのライブを見に行くこと。しかし、そんな話が合う人は多くはない。
そういえば、部屋番号はどうやって知ったんだろう。ストーカーなんだろうか。私みたいに地味な女にストーカーなんて・・・。それに、どこかで会った時にさりげなく声を掛けてくれる方が自然だと思うけど・・・。ポストに手紙を入れてくるなんて変な人だな。
『僕の部屋は403号室です。前に斬島さんが郵便ポストを見てたところに通りかかって、部屋番号を知りました。素敵な方だからやっぱり気になってしまって。びっくりさせてごめんなさい。でも、僕はごく普通の男で怪しい者ではありません。だから怖がらないでくださいね。よかったら今度の週末、お茶しませんか?』
『いいですよ。何曜日の何時がいいですか?』
私は即返信した。その日は婚活があったが、その合間を縫ってお茶すればいい。数撃てば当たるかもしれない。写真を見たら素敵な人だった。きっとモテる感じの人に違いない。
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