婚活

連喜

第1話 私

 毎日暇だ。私は大学卒業後に東京に出て来たから友達が少ない。大学卒業して都内の会社に就職したけど、2年で退職した。理由は先輩からの嫌がらせ。毎日怒鳴られていて、精神的に疲れてしまったからだ。一時的に鬱になってしまった。今の仕事は派遣だからいろいろな職場を渡り歩く。短いところだと3か月という仕事もある。今まで社員にならないかと言われたことはないし、男性との出会いもなかった。派遣仲間とその時は仲良くなるけど、しばらくすると連絡が途切れてしまう。だから、長く付き合ってる友人はいない。


 何とか結婚して今の状況から抜け出したいと常に思っていた。土日はお見合いサイトで知り合った人とデートするのがルーティンになっている。ネットでの出会いでは、痛い思いもした。いいなと思って付き合った人に手ひどく振られてしまったり、派遣はちょっと、と言われたりする。プロフィールに書いてあるんだから、最初に言えよと思う。毎週出かけるのは疲れる。でも、結婚して専業主婦になるか、派遣じゃなくてパートの楽な仕事ができるようになったらいいなと思って、毎週せっせと出かけている。


 恥ずかしいけど、今までちゃんとした彼氏がいたことはない。やっと付き合ったと思っても、1ヶ月もたない。


 私は何をやってもダメだ。お金もなくて、見た目も普通だし、取り柄がない。派遣先でキラキラした社員の人たちを見て毎日落ち込む。学歴も育ちも何もかも違う。人脈も、持ち物もなにもかも。人は生まれ持ったものが違うのだ。


 私はとりあえず奮発して、オートロックのマンションに住んでいる。セキュリティが心配だから、家賃は高いけどそこだけは譲れない。住んでるのは学生が多そうだが、親が仕送りしてくれるのが羨ましい。私なんて地方の国立大学出身で、自宅から通っていた。親が仕送りできないと言ってきたから、自宅を出れなかった。親ガチャに外れて、今は落ちぶれて派遣なんて情けない。


 ある夜、家に帰ると、ポストに手紙が入っていた。表札を出してないから、部屋番号が書いてあるだけ。住所が書いてないから直接投函したみたいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る