常識の入手

 宿の中は時間帯のせいか、なかなかに静かだった。

 理由をテオに尋ねたら、どうやら今は昼食時の後らしく、宿泊客のほとんどは外出しているとのこと。


「お父さん! お母さん! 帰ったよー!」


 店に入るなり、テオは元気いっぱいの声を出した。

 子供ってのは、なんかいいもんだな。


「あらぁ、お帰り、テオ」

「おう、帰ったか! ……っと、ん? テオ、そちらの三人は、お客さんか?」

「ううん、この人たちはぼくの命の恩人なの!」

「「命の?」」


 テオの言葉に、首を傾げたテオ母とテオ父。

 テオは事の顛末を二人に話した。


 すると、


「「本当に、ありがとうございましたっ!」」


 ものすごい勢いで俺たちは感謝された。


「あ、頭を上げてください! 私たちは、偶然通りかかり、襲われているテオを助けただけですから。それに、実際に助けたのはこちらにいる刃ですので……」


 日本人特有の謙虚が発動。


 いや、実際マジでそう思ってるけどさ。

 もちろん、情報が得られるかも、なんて打算がなかったとは言えないが、それでも助けたいと思ったのは本心だしな。

 瑠璃と刃も似たような心境だっただろうし。


「それに、私たちも情報が欲しくて助けた、という面もありますので」


 とはいえ、この辺りを言っておけば、全力での感謝は少しは収まるだろうな。

 そして、俺の予想は正しかった。


「そう言ってもらえると助かります」

「だな」


 二人は俺の言葉で、なんとか頭を上げてくれた。

 見ず知らずの相手に頭を下げられっぱなしというのも、前世を思い出して嫌になるからな……。


「それで、情報が欲しいとのことだったね。向こうに行こう。……っと、三人はお腹は空いていないかい? テオの話だと、衣食住がないような感じだったけど」


 食堂らしき場所へ行こうということになり、早速移動……といったところで、テオ母がこちらを振り向き、食事が必要かどうかを尋ねてきた。

 飯か……。


「小腹が空いた程度ですので、私にはサンドイッチのような軽食を。二人はどうしますか?」

「私はお嬢様と同じものを」

「僕は少し運動したので、がっつりしたものをもらえれば」

「……刃、少しは遠慮したら?」


 遠慮なんて何一つしようとしない刃に、俺はジト目を向けながら一言。


「ハハハ! いや、気にしないで大丈夫だ! 息子の命の恩人なんだ、それくらいどうってことないさ!」


 しかし、テオ父は豪快に笑うと、刃の注文を快諾。

 それを受けた刃は、にっこにこと嬉しそうだ。


「ほら、こう言ってることですし、いいでしょ? お嬢」

「……そうね。ここは、ご厚意に甘えるとしましょう。すみませんが、よろしくお願いします」

「気にすんな! んじゃ、ちょいと作ってくるんで、その間ウィアと話しててくれ」


 どうやら、テオの母親はウィアという名前らしい。

 ちなみに、テオに似て、かなり優しそうな女性だ。


「じゃあ、話ましょ。とりあえず、飲み物が必要よね。えーっと……アリシアさんたちは、飲み物は何がいい?」

「水かお茶で」

「同じく」

「右に同じく」

「了解。それじゃあ、あそこの奥の席に座ってて。ちょうど、六人席だから」


 そう言われたので、俺たちは遠慮なく三人並んで座ることに。

 右に瑠璃、左に刃、真ん中に俺、という状態だ。


 ようやく座れたからか、急に足の疲れを感じた。

 まだ慣れない体で動き回ったからか?


 そんなことを思いながら待っていると、お盆に木製のコップを乗せたウィアさんが戻ってきた。


「お待たせ~。とりあえず、紅茶ね。お砂糖いる?」

「もらいます」


 佐藤が入った陶器製の容器をもらい、紅茶に砂糖を入れる。

 その紅茶を飲んでほっと一息。


 あー……なんか、ようやく休めた感があるわー……。


 ちなみに、こういった場面の際は、大体俺が喋り、瑠璃と刃は黙っている、ということになった。


 理由は……まあ、ご主人様を立てたいから、とのことらしい。

 あとは、前世でのメイドと執事のあれこれが染みついてる結果だろうな。


 刃に関しては、単純にめんどくさいだけだろうがな。


「さて、それで情報が欲しい、とのことだったね。えーっと……もし、嫌なら答えなくていいんだけど、なぜ情報が欲しいの? それに、常識を知りたいというのも。テオの話だと、辺境から来たって話だけど……辺境にしては、妙に気品があるというか、本当はどこかの貴族様か王族の人なんじゃ? なんて思ってしまうの。もちろん、言わなかったからと言って何も教えないなんてことはないから、安心して」


 す、鋭いなこの人。

 だが、気品? 俺に気品って……。

 あー、いや。まだ容姿を見てないからわからないな。


「そう、ですね……。それを話すかは、次の質問で決めさせてもらいます」

「何でも訊いて?」

「ありがとうございます。その訊きたいこと、というのは簡単で、この世界には別の世界から来た、なんて人はいるのでしょうか?」


 俺は、あのクソ女神との会話を思い出していた。

 その中に、自分の世界に魂を招いている、とか、もとの世界を行き来する方法がある、とかなんとか言っていた。

 そこから考えて、この世界には俺以外に異世界から来た奴がいるんじゃないか?

 と思うわけだ。


 そう思っての質問。

 これでも、この質問の回答が肯定的なものであれば、別段俺たちの話をしてもいいだろう。

 否定的なものであれば、隠すことにするかね。


 どのみち、俺たちの身の上の設定とか、何も考えてないしな。


 その辺は、思慮に欠けているな……。


「別の世界から……それはもしかして『転生者』のことを言ってる?」


 俺の予想はどうやら、当たっていたらしい。

 一瞬の考える素振りを見せた後、それらしい単語が飛び出てきた。


「恐らくそうだとは思いますけれど……一応、概要をお聞きしても?」

「構わないわ。転生者っていうのは、読んで字のごとく、転生した人のこと指すの。この転生してきた人たち、というのはこの世界で死んで、別の人に生まれ変わった、とかじゃなくて、こことは違う世界から転生してきた人たちのことね」

「その違う世界というのは……」

「うん、一般的には『異世界』とか『異界』、『別世界』、『未開の地』なんて呼ばれてるかな」

「転生者の方たちは今も?」

「世界の至る所にいるね。でも、そこまで数は多くないわよ? 多くても……二百とか」

「十分多いかと思いますけれど」


 そもそも、異世界系作品において、転生者やら転移者は何気に主人公以外にもいるが、そこまで多くはないだろ。

 多いと言っても、クラス単位の話とかだしな。

 なのに、二百て。

 あのクソ女神の道楽が原因だろうな、これは。


「それにしても、どうして転生者のことを? あなたたちの事情と関係があるみたいだけど……」

「はい。どうやら、お話しても問題なさそうですので、今からお話します」

「別に、無理して話さなくてもいいのよ?」

「大丈夫です。私が問題ないと判断したのですから、大丈夫です」


 心配してくれるのは嬉しいがな。

 結構なお人好しっぽいぞ、この人。


「こほん。率直に言います。私たちは、転生者です」

「あら!」

「ほんと!?」


 俺がカミングアウトをした途端、ウィアさんとテオの二人は驚きに目を見開いた。

 いや、テオの方はなんか……少年特有の、カッコいい存在に会えた! 的なあれだな、うん。

 ってか、なんかこの言い方、中二病っぽくて嫌だな……。

 異世界に転生しちゃってる時点で、嫌もへったくれもないが。


「おそらく、ですが。私たちもこの世界に来たばかりでして、よく知らないのです。そして、人里を目指し歩いている際に、偶然テオを見つけて今に至るのです」

「なるほど、そうだったのね~。……通りで、辺境から来たわりには、身綺麗わけね」

「そういうことです。……ですので、できることなら、この世界について教えてもらいたいのです。やはり、無知というものほど怖いものはありませんから」

「そういうことなら、任せて! 色々と説明しちゃう!」


 なぜかテンションが急激に高くなったが、何とか無事、情報が得られそうでほっとした。



 ちょうどいいタイミングで食事が運ばれてきて、俺たちは食事を摂りながらこの世界についての話を聞いた。


 この世界は『レブラント』というらしい。

 主に、恩恵と魔法によって成り立っている世界で、種族はそれなりにいるらしい。


 現在、主だった人間の国は三つ。


 他の二国に関しては、ここでは割愛。

 俺たちが今いるこの街は、『ヴァリアリック王国』という国の中にある街らしい。

 この国は、農作物や家畜等、食に関する産業が大きく発展しているらしく、食料自給率がかなり高いらしい。

 様々な農作物を育てている関係上、主食となるものがなかなかに多く、その中に米もあったのは、個人的にかなり嬉しいところ。

 やはり、日本人は米だ。


 ちなみに、この街では果物系が名産品のようで、高級レストランやらスイーツ系の店を営む人たちからはかなり好評だとか。

 余裕ができたら少し買ってみようと思った。


 で、今はこの国の簡単な話だが、ここから先はそれ以外のことだ。


 まあ、世界情勢のようなものだな。


 どうやらこの世界は、俺たちが知っているようなファンタジーな世界のようで、いわゆる獣人や魔族、精霊、ドワーフなんかもいるようだ。


 昔は、人間と魔族、獣人の三種族の間で大きな戦争があったらしいんだが、今はそんなことがあったと思わせないくらいに友好的な関係になっていて、親交が深いそうだ。


 ちなみに、戦争終結後の和平に関する会談の際、他種族もその場に参上し、結果として今世界中にいる種族は、漏れなく友好状態にあるとのこと。


 平和で何よりだ。


 これは余談だが、この国は人間の国だけでなく、全ての国の中で最も他種族が来る国としても有名であり、実際他種族同士の結婚も多いんだとか。

 正直、戦争真っただ中な世界じゃなくてよかったよ。


 俺はできれば、平穏に且つ時には刺激のある生活を望むからな。

 あとは、不自由さだ不自由さ。

 それが一番。


 そして、次に説明を受けたのはこの世界のシステムだ。


 システム、とは言っても、されたのは『恩恵』、『魔法』、『加護』の三つなんだがな。


 どうやら、この世界にはステータスに関するものはなく、あるのはこの三つ。

 一応、ステータス的なものとしては、魔力があり、専用のアーティファクトを使うことで、数値化して表示することができるらしい。

 そのアーティファクトは改良に改良を重ね、精度が年々増してきているらしく、今ではほぼ100%正確な数値を計測できるようだ。


 話が逸れたな。


 俺たちが最初に説明してもらったのは『魔法』。


 魔法は、基本的に誰でも使える力、という認識らしく、俺達でも使えるとのこと。

 基本的な属性は、火、水、風、土、聖、闇、の六属性で、ほかにも派生属性や複合属性、もしくはどれにも属さない魔法がある。


 適正という概念はほとんどなく、練習次第ではどうにでもなる力らしい。


 とはいえ、才能がなければ使えないような魔法もあるし、才能がないと分かった場合は、肉弾戦をメインとした職に就く人がほとんどだとか。


 実際、魔法を生業とする人は、人間の総人口では四割ほど。

 残りの六割は才能がなかったり、そもそも学べなかったりで習得できていない人らしい。


 だが、誰でも簡単に使える魔法の一つとして、身体強化というものがあり、この世界に生きる者は自然に身体強化を使っているようだ。


 テオを助ける際、刃の動きがやけによかったのはそれだろう、と俺と瑠璃は納得した。

 あいつ、無意識で習得したのか?


 そして、次。


 次に説明を受けたのは『恩恵』。


 この世界では、これが最も重要視されていると言ってもいいようで、これがあるのとないのとでは、扱いに差が出るとのことだ。


 この恩恵というのは、言ってしまえばその人物が持つ、特殊な能力のことで、ラノベやマンガで言うところの『ユニークスキル』という奴だな。


 この恩恵は、レブラントに住む者たちの約三割しか所有していないらしく、どんな恩恵でも持つだけで一定以上の待遇を受けられるくらいらしい。


 実際、この恩恵というものは、どんなに弱い、もしくは使いづらいものだったとしても、ある一点においてはかなり強力なものに化ける場合があり、ハズレがないみたいだ。


 この恩恵にはS~Eランクまであり、Sに近ければ近いほど、強力らしい。

 尚、なぜそのランクの付け方なのか尋ねたら、異世界人がそういう風に設定したらしい。すっごい納得。


 次に、『加護』。

 これに関しては、持っている人間は限りなく少ないらしく、レブラントに住む者たちのなかで、一割いればいい方とのこと。


 この加護というのは、基本的に神や精霊から与えられるもので、先天的、後天的に限らず、必ずと言っていいくらい有用なものばかりだ。


 中でも、神からの加護はかなり強力であり、人間の三大国と呼ばれる国のうち一つ、『クリアナ皇国』という、クリアナ教の総本山の国にそれが知られると、国賓待遇で迎えられるらしい。


 できることなら、俺はそんな加護、なくていいけどな。


 ま、今はクリアナ皇国を例に出したが、そうでなくとも、いろんな方面から引っ張りだこらしく、あれば一生くいっぱぐれることはなく、下手をしたら遊んで暮らせるそうだ。


 そして最後。


 最後は転生者について。

 とはいえ、転生者については判明している事が少ないようだ。


 現段階でわかっていることは、異世界で死亡し、この世界に転生している事。

 必ず強力な恩恵を得ている事。

 そして、全員が必ずしも同じ世界からきているわけではない、という事だな。


 ここで驚いたのは、どうやら俺たちが住んでいた世界だけでなく、全く違う世界から転生してきている人もいるってところだな。


 聞けば、空飛ぶ車や電車がある世界もあれば、海の中で生活する世界、逆に宇宙を旅しながら生活している世界などなど、本当に様々なところから転生してきているらしい。


 そういえば、あのクソ女神は、自分の趣味で死亡した人物の魂を自分の世界に転生させている、とか言ってたな。


 なるほど、いろんな意味でひでぇ趣味だ。


「――と、こんなとこだな。どうだ? 理解できたか?」

「はい。バッチリ理解できました。教えていただき、ありがとうございます」

「いやいや、いいってことよ!」


 これでなんとか、この世界のある程度の情報は得られたな。

 まあ、これでもまだまだ不十分だとは思うが、都度情報収集はしていこう。

 特に、他国に関する情報とか、だな。


「さて、と。気が付けばかなりの時間になってしまいました、我々はお暇します」

「あらあら? もう行ってしまうの?」

「はい。私たちは、情報を得に、人里を目指していましたので。それに……転生したばかりで、私たちには金銭もありませんから」


 さすがに、食事もご馳走になっている以上、これ以上は厄介にはなれない。


 ……しかし、なんだ。この不自由さ、素晴らしいな!


 今までは、金がなくなる、もしくはないなんて状況は全くなく、面白くない毎日だったが……そうか。金がないというのはこういう感覚なのか!


 やべぇ、なんかすんげぇ嬉しいんだが!


 ……ま、それでも住む場所がないのは、早急になんとかしないとな。


 俺はともかく、この二人のためにまともな場所に住みたいしな。


「なんだ、嬢ちゃんたち、泊まる場所がないのか?」

「えぇ、まあ……。転生した直後なんて、お金とかありませんし……」


 むしろ、ある方が怖いよな、これ。

 あのクソ女神。

 こんな姿にしたんだったら、せめて安い宿で一泊できるくらいの金くらいは用意してもらいたかったな。

 さっき俺が思ったことと矛盾してるが。

 いや、これは俺のためじゃないから。瑠璃と刃のためだから。


 ちなみに、この街へ入る際、通行税が存在したが、『安らぎ亭』の存在は、街の中にいる者たちにとっても身近な物であり、その倅であるテオを助けた結果、俺たちはなんとタダで入ることができた。


 そういえば、その門番の人から謎の視線をもらっていたが……あれはなんだったんだろうか。


「ということは、この後は野宿をするつもりだったのかしら?」

「そうですが……」

「そ、それはいけないわ!」


 俺が野宿するつもりだったことを告げると、ウィアさんは机を叩きながら立ち上がると、大声を出した。


 ちなみに、俺はびくっとした。


「こ~んなに可愛い女の子と、綺麗なメイドさんがいるのに、野宿なんて絶対ダメ! この街にはね、少し前から不審者が出るって噂なの!」


 その情報は少し心配だな……。


「いえ、この二人はかなり強いのですけれど……」

「強い弱いじゃないの。あなたたちが住んでいた世界がどんな世界かは知らないけど、そっちの常識は通じないと思った方がいいわ!」

「……たしかに」


 そこは、ウィアさんの言う通りだ。

 こっちの世界の人間は、聞いた限りじゃ元の世界の人間より強いみたいだからな。

 異世界生活がスタートしたばかりのひよっこ転生者じゃ、たしかに不安がある、か。


「ですが、私たちには行く場所は……」

「だったら、うちにしばらく滞在するといい」


 困ったように話す俺の言葉に、テオ父――ブルードさんががははと笑いながら、そう提案してきた。


「え、い、いいのですか?」

「もちろん。私たちの大事な一人息子を助けてくれたわけだしね。これくらいは安いものだから」

「そうだぞ。遠慮せずに泊ってくれ! テオも、そのほうが嬉しいだろ?」

「うん! アリシアお姉ちゃん、泊ってって!」


 ぱっ! と純粋な笑顔を向けられた。


 ……やばい、なんか知らんけど、涙が出そうになった……。

 こっちの世界の人間、あったけぇ……。


 出会ったの、まだテオ一家だけだが。


「お嬢様。私もこの厚意は受け取るべきかと存じ上げます」

「僕も同意見ですね」

「二人とも……」

「そもそも、見知らぬ世界でいきなり野宿生活をするというのは、かなり危険です。宿泊する場所がなければ、やむをえませんが、安全な場所で休めるのならば宿泊するべきです」

「メイドさんの言う通りだぜ、嬢ちゃん。俺たちとしては、是非とも泊ってほしい。もちろん金はいらねぇし、ある程度の準備ができるまでいてくれてOKだ」


 それはかなりでかい……。

 今の俺たちには仕事なんてない。

 だから、安定した収入なんてものはない。

 そういう意味では、この提案はものすごくありがたい。


 ……そうだな。

 俺自身、こういう人間との関りは全然できなかった。


 よし、異世界生活最初の一歩として、まずは助け合う、というところから始めていくか!


「それでは、よろしくお願いいたします」

「そうこなきゃーな! ウィア、二部屋空いてるか?」

「空いてるわよ~。たしか、二階の一番奥の二部屋」

「ほ~、なかなかいい部屋だな。よし、じゃあ三人はその部屋を使ってくれ。これ、部屋の鍵だ。食事に関しては、朝食が朝七時、昼食は自由。夕食は七時からなんで、よろしくな。あぁ、朝と夜に関しては、事前に言ってくれりゃ、時間をずらすことも可能なんで、遠慮せず言ってくれ」

「何から何まで、ありがとうございます」

「いいのいいの。さ、テオ、アリシアさんたちを案内してあげて」

「うん! お姉ちゃんたち、こっちだよ!」


 俺たちはテオの案内で、しばらくの間住むことになるであろう部屋へと向かった。



「……それにしても、不思議な三人だったわね」

「そうだなぁ。転生者ってのには、初めて会ったし、驚いたが……俺としちゃ、あのアリシアって嬢ちゃんが気になるなぁ」

「あなた? その言い方だと、変態みたいよ?」

「あー、いや、そういう意味じゃない。なんてーか……ほら、やたらと気品があったし、あの執事とメイド。明らかに、庶民の生まれじゃないよなぁ。俺、アリシアさんが王族か貴族の生まれでも信じちまうぜ。まあ、お前もあの三人の前で言ってたがよ」

「……そうね。あれ、別に冗談で言ってないのよねぇ……。なんなんでしょうね、あの三人は」

「ま、いいじゃねーの。俺たちの恩人に変わりあるめぇし。とりあえず、友好的に接しようぜ。ってか、俺はそうするつもりだしな! いい奴らみたいだし!」

「そうね」

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