第2話 緊急寄稿? 大寒波の日本よりもちろん寒いオランダの冬
今から20年近く前ですが、1年近くオランダの地方都市に住んでいました。
オランダは、緯度の高い北の国です。
暖流のメキシコ湾流のおかげで緯度の割に温暖とはいえ、オランダのすぐお隣はもう北欧。そして、私が住んでいたのもオランダの中でも北の方だったのです。
そりゃあ、外はムチャクチャ寒かったですよ!
2023年1月25日。日本に大寒波が到来して、積雪で大変なことになっているわけですが。日中の気温は幸い氷点下にはなっていません。
私が住んでたオランダの地方都市。バスターミナルに気温が表示されていたんですが、昼間の一番温かいであろう時間帯でも「-8℃」。
近くのスーパーに買い物に出ようとして、玄関を施錠した後で手袋を忘れていたのに気づき、だけども「面倒くさいからいいや」とそのまま歩き出したのですが……。
ものの20mくらい歩いただけで、「あいたたたーっ!」と悲鳴を上げて家に戻りました。
「寒い」とか「かじかむ」とかすっとばして、いきなり「痛い」になるんですよ、氷点下8℃の世界ですと……。
玄関のカギをまた開けて、台所まで走って、大慌てて給湯器からお湯を出して痛む手を温めたのを覚えています。
冬の寒さが便利?といえば……。
私が通っていたオランダの国立大学の英語コースの先生のお宅に招かれまして。(受講の経緯は前回の記事をお読みくださいませ。「第1話 ユーラシア大陸の西の果てに集いし外国人たち(含む日本人)」https://kakuyomu.jp/my/works/16817330647534553080/episodes/16817330647534593999)
何でも、引越したんだそうで、新居でハウスウォーミングパーティーなるものを開かれたのです(引越し先を人間の気配であっためるような意味なんでしょうね)。
このパーティーに、先生が受け持っている生徒がみんな招かれました。
複数のコースを担当していたので、大勢でしたよ~(20人近くいたんじゃないかな)。
そして、メンバーがそれぞれの国の料理を持ち寄ることになっていました。
私はもちろん「SUSHI」を持って行きましたよw
先生の方でも飲み物とかいろいろを普段使いの冷蔵庫に用意して下さいましたが。
イタリア勢が(当然遅刻してくる。だってイタリア人だからw)さらにワインを持って来て、そしてそれを冷蔵庫で冷やそうとして、「冷蔵庫がいっぱいだ。入らない!」と言い出したのです。
すかさず誰からともなく突っ込みがw
「おいおい、今は冬だぜ?」
「しかもここはオランダだぜ?」
「もちろん外は氷点下だぜ?」
イタリア青年「あ、そうだよな」と台所の勝手口を開けて、外にワインボトル並べてました。よう冷えますわ、そらw
ただ、気温はとても寒いのですが、雪はあまり積もりません。
風がよく吹くせいか、天気の移り変わりが激しく、雪になっても続かなかったりします。
それに、日本の湿ったドカ雪とちがって、さらさらのパウダースノーですしね。
私は日本の太平洋沿岸の神戸で育ったので雪が珍しく、また当時は若かったので雪が積もらないのが期待外れで、「雪、積もらないかなー」と楽しみにしておりました。
ある夜。
オランダの家の前の道と緑地(公園になってました)に雪が積もり始めました。
雪だ、雪だ、オランダの雪だ~♪
もちろん、私、浮かれて外に出ましたともw
夜なので家の玄関から出て、緑地の中ほどまで行ってくるっと回ってまた自宅に戻ります。
……この時の私は、特に後のことを深く考えていませんでした。
日本同様、雪が降り始めたらしんしんと降り積もるものとイメージしていましたし、日本と同じく1,2日経てば溶けてなくなってしまうだろうと漠然と想像していたのです。
ところが。
積もった雪はそれ以上積もらず、そして連日昼間でも氷点下が続くのです。
するとどうなるか。
雪の降り初めに私がつけた「足跡」が残ったままなんです。
1週間経ってもも10日経ってもずーーーーーっと!
まるで漫画のワンシーンのように、玄関から出て、公園の中ほどでぐるっと回って、また玄関に戻る足跡が!
道行く通行人の方々に「この家の住人は雪が積もって相当はしゃいでいたようだ」と丸わかりw 晒し物状態ですよw けっこう恥ずかしかったです////
オランダの冬の辛さは寒さだけではありません。
というか、建物は二重窓でセントラルヒーティングなので、部屋の中はあったかいんですよ。
ツラいのは日照時間の少なさです。
緯度が高いので、冬は朝になってもなかなか明るくならず、そして冬はすぐに暗くなるのです。
朝食を食べる時間帯でも外はまっ暗ですし、昼間も15時くらいから夕暮れで16時くらいでもう日が落ちてしまったという記憶があります。
昼間はどんよりと低く雲が垂れ込めていますし、なかなか気の滅入る毎日でした……。
私がオランダの人々に抱いている印象は「ジョークを飛ばすのが大好きな明るい人が多い」というものなのですが。
そりゃこんな気候なら住んでる人間同士でご陽気に過ごさないとやってられんわ……と思いましたよw。
高緯度のオランダ、夏は反対の現象が起こります。
夕方っていうか、夜になっても暗くなりません。
子どもを連れて旅行に行った時に、自由研究のネタにしましたが。
夜中の10時ごろでも、まだ明るいです。
さすがに白夜とまではいかないけれど、同じ地球上にこのまま日が沈まない地域も実在するんだな……と感じられましたね。
そうそう。
オランダの冬と言えば。
伝統的にはスケートマラソンが開かれていたんだそうですよ。
オランダは車用の道路に負けないくらい、運河が張り巡らされています。
寒い冬だとその運河が凍ります。その運河を延々と走るスケートマラソンが開かれるんだそうです。
オランダ暮らしの前に何かの本で読みましたし、オランダの家のお隣さんも言ってました。
今ネットで検索するとアムステルダムからフリースラントまでの200キロ!のレースがあるそうです。
お隣さんが言っていたのも多分これだと思います。
運河は各都市を結んでいるので、凍りさえすればこんなレースも可能です。
もっとも。
お隣さんがおっしゃるには「Global warming(地球温暖化)で運河が凍らなくなったから、今では開催されない」とのこと。
とはいえ今でもオランダはスピードスケートの世界最強国です。
冬季オリンピックでは、オレンジ色のオランダ選手が活躍しますよね。
なお、スキーは、個人的に嗜む人はもちろんいますが、オランダ国内で楽しめる場所はないでしょう。
オランダは海に面した低地で、しかも人工的に干拓して国土を拡大してきた歴史があります(オランダ人の好む言葉に「世界は神がおつくりになられたが、オランダはオランダ人がつくった」というものがあります)。
基本的に、みわたすかぎりずーーーーーっと平地です。
私もオランダ滞在時、山らしい山を見かけませんでした。
(内陸にいけば少し山がちになるんですが、それでもオランダで最も標高が高い場所でも海抜322.5mしかありません)。
私が事情があって日本に里帰りしたときに何が懐かしかったって、関西国際空港から京都に向かう途中、大山崎で線路に山肌が迫ってくる光景です。
久しぶりに「山」を目にして、それが沁みいるほどに懐かしかったです。
などと、つらつら思い出話をつづっているうちに、日本の私の部屋も夕方を迎えています。
(今日は必要最低限の外出だけで、家におります)。
低く垂れこめる空、暮れなずむ街。
オランダの午後を思い出します。
冬は寒くて辛いけれど、家の中は明るく楽しく。
やたらハイテンションでジョークをとばしまくるオランダ人たち(私の周囲がたまたまだったのかもしれませんがw)を見習って、この冬を乗り切って参りましょう!
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