第31ワン 勇者と淫魔
「シノブ様!ジロー様!一体何を……」
盗賊4人の元に突っ込むしのぶ。
「こっちだお前らぁぁあ!!」
「ワワンワンッ」
攻撃対象を変更した盗賊達はしのぶに襲いかかる。
「ふんっ!」
盗賊の一人が振り下ろした短剣の刃を聖剣の前で受け止めるしのぶ。
「ぐっ……」
しかし他の盗賊たちはしのぶ本人を攻撃し始めた。
「痛たたたた!硬化してても痛覚はあるから痛い!ジロー、早くこいつらの匂いを嗅ぐんだ!!」
しのぶの後方で空中に鼻を向けていたジローは、
「ワン!」
と一言吠えると踵を返し、遠巻きに戦闘を見ていた民衆の中に突っ込む。
「ワンッ!ワンッ!」
そしてフードを目深に被った人物の前で、執拗に吠える。
「何だこの
フードを被った人物の声は女のものだった。
「ジローは“術の匂い”を辿ったのさ!というわけでそいつが術者!!早くそいつを……いててて!!」
袋叩きにされながら叫ぶしのぶの声を、ナイーダとショースケは逃さなかった。
「 夜よ全ての歌を浚い、仕立てよ空を裂く緑蠑(サイレン)の悲鳴……フェルム・ベントゥム!!」
ナイーダが呪文を唱えると、魔力により作り出された風の刃が術者を襲う。そして被っていたフードが切り裂かれ、青い肌をした顔が露わとなった。
「魔族!それも
サキュバスは一瞬、笑みを浮かべるとハンマーを構えて走って来るショースケの顔を凝視する。
「処かなり人間!その男も操ってくれるわ!!」
「しまった、ショースケ君、そいつの目を見てはダメ……」
ナイーダが警告した刹那、サキュバスの視界に映ったのはジローの顔だった。
「んな……ッ」
そしてジローは跳んだ勢いでサキュバスの顔面にドロップキックの要領で後ろ足を伸ばした。両目に犬の硬い肉球が入り込む。
「ぐおおっ!目が!」
「ようやったぞジロー!!」
ショースケはハンマーを振りかぶり、サキュバスの頭上に振り下ろす。鈍い音とともにサキュバスは失神し、削れた。
「
「淫魔は目の合った者を魅了しますからね。ジロー様が目潰しをしなければショースケ君が操られてしまうところでした……」
「ありがとよ、ジロー。しかし魅了ってのは犬にゃ効かんのか」
「獣を操るのは駆士(ハンドラー)の領分ですからね。只人や、エルフやドワーフの様な「人」にしか効果が無いのでしょう」
ナイーダとショースケは会話をしながらサキュバスの体を拘束する。また魅了を使われても厄介なので手足を縛るだけでなく目隠しと猿轡も着けておいた。
「なるほどのう……ところでシノブは……?」
「このやろう!痛かったぞ!」
「ぬおうっ」
サキュバスの失神により魅了が解け、意識の戻った盗賊たちだったが、それまで集中攻擊を受けていたしのぶにより、各自睾丸を蹴り上げられるという報復を受け、悶絶しながら転がっていた。
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