第2話 憧れの学園へ
「お師匠様ー!早く早くー!!」
「そんなに急かさないで下さいよー。学園は逃げませんってば。」
お師匠様はそう言いながら急いで駆けてきて、手に持っていた小さな箱を私に差し出した。
「私からのちょっとした入学祝いです。きっと貴女を助けてくれるでしょう。いついかなる時も肌身離さず持っていて下さいね??」
普段はなかなか見せないお師匠様の真面目な表情にこくりと頷き、ふたをそーっと開けてみると、中にはさまざまな色に光る小さな光の粒が連なったブレスレットが入っていた。
そのブレスレットの放つ綺麗な輝きに思わず見惚れていると、お師匠様は丁寧な動作でそれを取り出すと、私の右手首にカチリとつけてくれた。
「これでよしと。......では、いきましょうか。このままだと遅刻しちゃいますよー!」
「はっ!もうそんな時間!?い・そ・い・でぇーーーー!!!」
「はいはい、では。........メタスタス。」
お師匠様が呪文を唱えると、目の前の景色がぐにゃりと歪み、瞬きする間にはプァレッタ学園の校門前に着いていた。
辺りを見回してみると、遅刻ギリギリで閑散としているはずのその場には何故かたくさんの生徒がいた。
「........え?」
その誰もが、信じられないものを見たという風に揃いも揃って豆鉄砲を食らった鳩のようなマヌケな表情をしていたため、私たちは思わず大笑いしてしまった。
........って、そんな場合じゃなぁーーーっい!!!!!
私たちが転移魔法で転移してきたところをその大勢に見られたことで、目立ちたくないという私とお師匠様の小さな願望は一瞬で儚く消え去ってしまった。
「ちょっとお師匠さまぁ!どうしよう!!なんでこんなに!?」
「あれぇ?おかしいですね。この学年は遅刻が多いのでしょうか??........ま、いいですいいです、そんなこと。ほらエリア、いってらっしゃい。」
優しく微笑みかけてくれるお師匠様に背中を押され、私は憧れのプァレッタ学園へ一歩足を踏み出した。
校門を抜けると、そこには様々な種類の植物が植えられた庭園が広がっており、螺旋階段でつながるローズゴールドを基調としたお城のような校舎の正面には、中心にそびえ立つ噴水が印象的なやや小さめな池が広がっている。
まるで別世界に来たようなその景色は、私を本の中にいるお姫様のような気分にさせるのには十分だった。
「学生証をお見せください。」
遅刻ギリギリだというのにも関わらず、入学式が行われる大広間の入り口にはおそらく上級生だと思われる案内役が、優雅に沢山の新入生の学生証を確認していた。
「わかりました。........レスパス。」
空間魔法、レスパスを使って収納から学生証を取り出し、目の前の女性に渡そうと彼女の顔を見るとその目は大きく見開かれ、先程までの可憐で輝くような笑顔がまるで嘘のように頬をひくつかせていた。
........あれ?私なんかやらかした!?!?
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