第6話 なんで頭を下げなきゃならんのだ!
「ええー……ですから、この通信水晶は不要なエネルギーは放出していません。魔術使いにより精霊を呼び出したときにのみエネルギーを」
「その話には聞き飽きたわ!でもね!実際に私の娘は頭痛に悩まされているのよ!全部通信水晶が近くにあるせいよ!」
困ったものだ。こういったクレームはたびたび来るが、基本的に話は受け入れてもらえないし、根本的な要因を突き止めて解決しないとクレームが通信局を飛び越えて国に行ってしまう。
「娘さんとお話しさせてもらえませんか?」
トキシカ、基本的にこういう場合被害者とは会わせてもらえないものだ。
「呼んでくるわ!レベッカ!いらっしゃい!」
本当に被害者を呼ぶのか。
だいたいいつものパターンだと魔術使いの見習いが下手な呼び方をして輻輳したものがエネルギーの微量な蓄積により頭痛引き起こすとか、通信水晶自体が関係なく呪いをかけられているパターンだが、事前に調べたが輻輳ではないようだ。
「こんにちは。レベッカと言います。」
少女が不安そうに名乗る。
「こんにちはレベッカ。僕はメディシだよ。こっちがトキシカ。」
「こんにちはレベッカ。私がトキシカ。あっちがメディシ。」
「……えーと、頭痛はいつ頃、どんな時にするのかな。」
「よくわからないです。」
「というと決まった時間には頭痛はこないんだね。」
「はい。」
「それぐらい痛いのかな。」
「ズキンって痛くなります。」
「そっか、ズキズキ続くような感じではないんだね。」
トキシカが袖を引く。
「すみません、一度外にでるので風に当たりながら考えさせてください。」
そして被害者宅から出て一息つく。
「メディシ先輩、通信水晶の影響じゃないんですからそう言い切って帰りましょうよ。」
「そうなんだけど、きっとまたクレームは来るよ。」
「だからといって関係ないことに首を突っ込むのは違いますよ。」
「分かってる。だからいい案がある。」
そういって書類に必要事項を記入して部屋に戻った。
「調査した結果、やはり通信水晶に異常は見受けられませんでした。」
「でもね!私の娘は!」
「これを差し上げます。レベッカ、手を開いてごらん。」
そういって小さい水晶の付いたペンダントをレベッカに渡した。
「わぁ、キレイ。不思議な形。」
「面白い形だろ、僕が彫ったんだ。マガタマ型っていうんだよ。これはね、水晶の通信があるたびに光るんだ。ほら、今も光った。今頭痛はあったかな?」
「今はなかった。」
「ということで、このペンダントで通信があったかどうかわかるので、それで頭痛に関連しているようならまたご連絡ください。またこれを廃棄して頂いてもかまいませんので。この書類に必要事項は書いてありますから。」
「あらそうなの、今は痛くないのねレベッカ。」
「うん、痛くない。」
「では頭痛が治まることを願っています。レベッカまたね。またいつでもご連絡ください。」
「では私もさようならレベッカ。」
「今は痛くないのね……そう……。」
—―
「メディシ先輩、あれ私物ですよね、通信に反応する水晶なんて高いでしょう。いいんですか?」
「いやよくはないとおもう。」
「よくないってわかっているのに」
「でもまあ今まで解決できなくて苦肉の策で渡したペンダントたち、ぜんぶクレーム止んでるし実際に目で通信の有無が分かる効果があるからなぁ。」
「でも駄目でしょう。」
「駄目だね。よくないことだけど上司たちには伝えてあるし、黙認だから。」
「でも駄目なものは」
「駄目。分かってる。」
トキシカは抗議の言葉を一通り述べた後、黙ってついてきた。
「もしこれでも解決策が見つからないときはブラウンワールド国際法に則って全国で通信水晶関係の不具合を見つけないといけないね。俺はただの人間だから、あとは魔術が使える方々に任せる。」
「責任放棄ですか。よくないです。」
「よくないね。帰る前にこの町ではお菓子が名産らしいから食べていかない?」
「この町では果物が練りこまれたアイシングクッキーが有名でワールド新聞の記事にもなっていました。」
「そうか、じゃあみんなにお土産かっていかなきゃいけない。」
「そうですね。」
そうけしかけてから自分の財布が心もとないことを思い出して途方に暮れた。
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