第35話 豊富な井戸

 もはや、今の自分は潤沢な井戸のようなものなのかもしれない。

 どれだけ汲み上げても水が底を尽きることはない。

 それゆえに人々の生活に潤いを……


「ふぅ~~~~~……えへ♥ ラブリィの分の5本デキちゃった♥ ありがとう、ジャーくん、ちゅっ♥」


 のそっとベッドから起き上がり、トロトロになった淫猥な笑みを浮かべながら、仰向けになって天井を見上げている自分の唇にキスをしてくるラブリィ。

 唇を離してベッドから離れる裸のラブリィ。その足取りは重そうだ。



「えへへ、もう足も腰もガクガクだよぉ~♥ 一対一で可愛がってもらえるの初めてで、私も頑張りすぎちゃった。ジャーくんも嬉しかったでしょう? 嬉しいって言いなさい」


「ああ……至福の時であった」


「本当?! 嬉しい! 私たち身体の相性もバッチリのお似合いさんカップルなんだね♥」



 そう言わせ、そう言いながら、ラブリィは手に持っている「中身の入った小瓶」を持ってベッドの脇に行く。

 そこには既に四本の瓶が並んでおり、それを愛おしそうに両手で抱える。



「ジャーくん、それじゃあまた後でね。一人五回ずつで交代、またもう一周あるんだからね?」


「………………」



 もう一周。その言葉にもはや自分もどうしようもなかった。

 自分の精が体力と魔力を回復させる効果があると知った小娘たちは、来る連合軍との決戦に向けた準備として、自分から精を搾り取るだけ搾り取ろうとしていた。

 さらに、五人同時ではなく、一対一で自分の分は自分で調達しようと小娘たちは話し合ったようで、一人五回搾り取れば交代、五人全員回ればまた最初から繰り返す。

 現在自分はシャイニ、アネスト、そしてラブリィに搾り取られた。

 そしてまだ……


「きゃっ」

「わっ!」


 ラブリィが寝室の扉を開ける。するとそこには、既に全裸待機していたディヴィアスが興奮しながら待っていた。


「ディヴィアスちゃ~ん、先走りすぎだよぉ~」

「いいじゃない、ずっと待ってたんだから! それに、連合が来る前にヤレるだけヤッとかないとでしょ? ほら、交代しなさいよ!」

「あん、も~~~う」


 もはや待ちきれないと、ラブリィを押しのけて侵入してきたディヴィアス。

 

「ジャーくぅん! とう!」

「……………」


 まるで水に崖から飛び込むような勢いで、ディヴィアスはベッドの自分に向かってジャンプして飛び掛かってきた。


「いいのよね? いいのよね! 私ひとり占めしていいのよね! いいのよね!」

「………………」

「したいこと何でもしてもいいのよね!」


 目を爛々とさせて鼻息を激しく荒げるディヴィアス。

 そう、この一対一とはこういうこともあるのだ。

 それは、既に互いの身体の知らないところはないと言えるほど交わり合った自分たち。

 しかし、それでも実はまだ明かしていない性癖的なものが五人それぞれにあるのだ。


 シャイニも……アネストも……ラブリィにも、全員一緒の時には要求されなかった、個人の性癖的なものを曝け出されて、貪られた。


 そしてそれはディヴィアスにもあったようだ。

 つまり、全員で交わっている時は、まだ小娘たちは全てを曝け出していなかったということなのだ。


 それがどれほど悍ましいものか。


「ジャーくん、私ね……ママになりたいの」

「…………」

「でね、ジャーくんはカッコよくてしっかり者だけど……ものすごい甘えて欲しいの」

「………?」

「だ、だからね、ジャーくん……そ、その……」


 そしてディヴィアスはモジモジと見た目はただの恥ずかしがっているウブな少女的な様子を見せながらも、その中身は……


「ばぶ~って感じで赤ちゃんになって、私に甘えなさい! 今から私のこと、ママって呼んで!」

「――――――ッ!?」

「言葉の語尾にさ、『でちゅ』とかつけてもいいわ!」


 そして、もはや自分のプライドも心も精神も死んでいるようなもの。

 ましてや既に他の三人に心もへし折られているので……驚くこともない……ただ、実行するだけ……


「ママ……抱っこしてほしいでちゅ……」

「ふぁあぁああああん♥♥♥♥♥」


 その瞬間、ディヴィアスは自分をその強靭な両腕で抱きしめてきた。



「抱っこしてあげるわ、私のかわいい坊や! 嗚呼、甘えていいのよ! いっぱいおっぱいに甘えて! ね? ジャ~~~~くぅん♥」


「……ばぶぅ」


「うひ、うひひひ! じゃ、じゃぁ、ミルクの時間にしまちゅ? あ、それとも、おもらちしてないかのチェック? ぅぅ~~、ヤルこと多くてママ大変だわ♥」



 唯一の救いはかつての忠臣や魔王軍の兵たちに今の自分を見られていないことか。


 いずれにせよ、もうじきすべてが決まってしまうかもしれん。

 

 堕ちた戦乙女勇者たちと、連合軍の同士討ちの戦。


 この戦の結果次第で、というよりも五人が本当に圧勝してしまうかどうかで、今後の自分の運命も――――


「はい、ジャーくん、お腹空いたでしょ? どーぞ♥」

「ばぶぅ」


 この地獄がどこまで続くかも――――

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