第34話 精なる秘薬

「何万人かな~。この間みたいに後片付けが大変だから、屋敷の近くじゃなくてこっちが向こうに出向いた方がいいよね」


「ですね。まぁ、同じことです。先日の王国兵たちのように私の魔法で一掃しましょう」


「待って、アネストちゃん。連合軍はそういうの分かってるわけだから、いきなり大魔法は警戒されてるから防がれちゃうかもよ? ここは~、ラブリィとキルルちゃんで主要な魔法部隊を片付けてからにしようよ~」


「ゴチャゴチャ考えてないで、正面から潰すってのはどうかしら? 何だか今の私ね……敵が何万でも全員……殴り殺せそうなぐらい調子いいの」


「いずれにせよ、全滅殲滅消滅不可避」



 何とも落ち着いた様子で、実の家族やかつて共に命を懸けて戦った仲間たちを始末するための話し合いをする小娘たち。

 誰一人迷いなく淡々と話し合い、そして誰もが敵を殲滅することに乗り気なところが恐ろしい。

 もはや連合やかつての家族に一切の未練も情も無いということか?



「確かに私たちは向こうの力を知り尽くしていますが、向こうも私たちを知り尽くしているというのもあります。そこで、思ったのですが、私たち五人で戦えば負けはしないまでも苦戦は強いられます。ですが、お腹の子供に万が一、億が一、兆が一何かあっても嫌ですので、可能な限り徹底的な圧勝をしたいところです」


「「「「異議なし」」」」


「そして何よりもジャーくんです。私たち五人で戦うとはいえ、ジャーくんをこの屋敷に一人で留守番させるわけにもいきません。私たちが連合と戦っている隙に別動隊がジャーくんに……それどころか、フェイト星将たち魔王軍がコッソリ来るかもしれませんので、角は再生できませんがジャーくんは私たちとと共に居てもらわなくてはなりません」


「「「「異議なし」」」」



 五人の中で一番頭の良いアネストが指針を決めようとし、それに他の四人も納得して頷いている。

 だが、互いに相手を知り尽くした者同士でぶつかり、ましてや相手は万の兵が居るのだ。

 いかにこの五人とはいえ……



「ただ、そう考えたとき、私たち五人で色々と作戦を考えていても限界があると思います。そこで、今回は私たち以上の頭脳を持った方に圧勝作戦を立案していただきましょう」


「「「「?」」」」



 ……ん? アネスト……貴様まさか!? すると、アネストは自分を見て……



「さぁ、アナタ、私たちが圧勝する作戦を立てて言いなさい♥」


「「「「あー、その手があった!」」」」


「なっ、き、貴様ッ!?」



 バカな!? 何だと?! こ、こやつら自分に作戦を考えさせる気か!?

 大魔王たる自分が連合と戦うために、勇者を使って……しかも圧勝させる?

 なぜ自分がそんなことを……いや、魔王軍にとっては願ったり叶ったりなのだが……



「そなたたち五人は更に一皮剥けた……」


「「「「「えへ♥ 剥けたというか、膜が破れたというか……♥」」」」」


「奥底に眠っていた魔力を五人とも引き出した。その魔力総量は数千の人間たちはいとも容易く蹴散らせるだろうが、それまで。やはり万の敵を葬るには魔力をどこかで回復させねばならぬ。そして体力もだ」


「「「「「回復……」」」」」


「そう、課題は魔力と体力」



 そして自分の口は勝手に動き……


「しかし、魔力回復のアイテムなどは非常に高価で今所持していないだろう? それにそういったアイテムも回復できる魔力はたかが知れている。さらに回復魔法などで怪我などは癒すことができても体力までは回復できぬ。だが、それに代わるものを自分なら提供できる」


 ッ!? いや、待て! 自分待て! 確かにそういう手も無くはないが……そんなこと今まで思いついてもやらなかった!

 し、しかし、口が意思に判して言うことをきかない!

 これまで「思いついた」ことはあっても、決して実行もしなかったし、部下にも教えなかったことが……



「本来なら自分が魔力をコントロールして手で触れて直接そなたたちに分け与えることもできるが、それは角がなければ無理だ。角を再生させる気は――――」


「「「「「だ~~~~~め♥」」」」」


「ならば、最終手段。もっと直接的に貴様らの体内に自分の魔力を与えて回復させる」



 やめろやめろやめろおおお! やめろおおおおおお!



「貴様らはこれまで行為に夢中で気づかなかったかもしれんが、実は自分の『精』には濃密濃厚な魔力が内在されている。それを決戦までに小瓶にでも入れて何本も用意すれば、戦闘中にソレを飲めば魔力の回復も可能。なんだったら、魔力が底を尽きたら他の者たちが足止めしている間に直接精を注ぎ込んでもよい」


「「「「「/////////////」」」」


「さらに自分の精は滋養強壮体力回復の効果もあるのだ。飲めば人間など体力全開になる。一人10本分……合計50本もあれば、数万の敵など余裕で――――はうっ!」



  言ってしまった。そして次の瞬間、五人が凄まじいほどいやらしい笑みを浮かべた。



「あは♥ そうなんだ~、ジャーくんの精にはそんな効果があるんだ~どうりでエッチするたびに元気になっちゃうと思ってた♥ 毒とか言って嘘ついてたのに~、本当はそんな万能薬なんだ~♥」


「うふふふふ、そうですか、50本ですか~……では早速作りませんとね、アナタ♥」


「んふふふ~、ラブリィは体力ないから20本は欲しいな~♥」


「そうと分かれば、早速製作開始ね♥」


「100本作る♥」



 まずいまずいまずい! こ、これは、これはまず――――――――おふっ

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