第33話 決別と覚醒
男との肉体関係どころか行為の場面を晒した上で、幸せそうに微笑みながら腹を擦るシャイニ。
もう、それだけで伝わるもの。
『う……うそだよ……ね、シャイ姉ぇ……』
『あ、ありえぬ! あってはならぬ! 嘘だと言え、シャイニ! そんなことあってなはらん!』
しかし、それでも「嘘だ」と現実を認めまいと、王子とシャイニの父は震えながら……
そんな二人にシャイニは……
「私のお腹には、もうジャーくんとの子供が宿ってるの……」
『『ッッ!!??』』
「私だけじゃなくて……アネストちゃんもラブリィちゃんもディヴィアスちゃんもキルルちゃんも、みんな孕んだの……。うふふふ、あのね、ジャーくんとエッチした女の子は絶対に受精しちゃうんだって、すごいよね♥ もう、それを知ってから、私たちは……むふふ♥ さらに万が一に備えて何度も念入りにジャーくんに愛を貰ったの♥」
正解は、無理やり襲われた。宝玉で強制的に動かされた。
そこに自分の意志は一切ない。
『そ、んな……うそだ……うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだーー! うそだああああああぁああああああああああ!!!!!』
王子が最大の発狂。頭を押さえてそのまま這いつくばってのたうち回る。
「……タッくん……お願いだよ、受け入れて! 私はタッくんのことを弟みたいに思ってた……だから、この子のこともタッくんの甥とか姪みたいに―――」
『ふざけるなあああ、くそおお、くそおおお、なんでだよぉ! なんでなんだよ! そんなことになって、操られていない? 洗脳されてない? そんなわけあるか、くそぉ!』
「タッ……くん……」
『許せるものか……受け入れられるわけがないだろ、シャイ姉ぇを蝕むそんな子供……悪魔の大魔王の、くそ、くそぉ!』
完全なる拒絶と罵倒。それはシャイニ自身も覚悟していたのかもしれないが、それでも親しかった幼馴染に実際に言われるとなると、何も感じないわけでは無さそうだ。
さらに……
『シャイニ……』
「お父さん……どうしてもダメ? この子はお父さんの孫になるんだよ? お父さんはもうすぐ、おじいちゃんに―――」
『ふざけるな! 今すぐ腹に石を打ち付けて中の虫を殺せッ! 今すぐに! できぬのであれば……待っていろ……我々はもうこの大陸に居る……今すぐお前たちを救い出し、正気に戻し、その腹の中の虫を殺してやる!』
「――――ハ?」
「許さぬぞ、大魔王……我らの正義の名に懸けて、たとえ五人の勇者が貴様に捕らえられていようと、万の兵で押しつぶす! 幸い今は魔王軍もこの大陸にはおらんようだからな……大魔王と娘たちの腹の虫はこの地上から駆除してくれる!」
ッ!? 何だ、この寒気は! この、禍々しい……ものはシャイニ?
実の父からの罵声と、腹の子を「虫」と言われた瞬間、シャイニの全身から悍ましいほどの瘴気が……
「この子を……コロス? ムシ? ジャーくんも駆除? ……ソウナンダ……私とジャーくんの子供を……ソッカ……ナラ……ワカッタヨ」
『……シャイ姉?』
『シャイニ……』
バカな。何だ? 内在するシャイニの魔力が一気に増えた? 最終決戦の時よりも遥かに。
これは、怒りによりリミッターが外れた? 隠されていた力?
バカな。自分も今になるまで気づかなかった。
こやつには、まだ上が……いや、底が知れぬほどの力が眠っていた!?
「私たちは受精したけど、別にまだ身体を動かすことに何の支障もないの……だからね……『連合軍のあなたたち』は……もう、私にとって仲間でも家族でも何でもない……私の家族はジャーくんとこの子と、そしてアネストちゃんたち……」
これは、屋敷が震えている? まさか、怒気を込めた威圧だけで大地が震えている?
いや、これはシャイニだけでは……
「同感です。ジャーくんと私たちの子を奪おうとする敵は駆逐しましょう」
「ジャーくんとラブリィたちの子供は絶対に守るんだから」
「ねえ、今更だし私たちのパパとママにも言ってくれないかしら? 祝福してくれるなら嬉しいけど、拒絶して、奪いにくるなら容赦しないって」
「ミナゴロシ」
これまでずっと映らないように脇で待機していた、裸の戦乙女勇者たち。
五人の怒りが、完全に人類の連合軍へと、かつての仲間へと、家族へと向けられている。
『そ、そんな……あなた方まで……』
『な、何という……何ということに……』
そして、裸の五人はそのまま自分に纏わりつき……
「ジャーくぅん、安心してね、ちゅっ、むちゅ♥ ちゅる♥」
「ええ。あなたは私たちと子の幸せだけを祈ってください、ぺろぺろ♥」
「ラブリィたちがジャーくんも子供も守るから。あむ♥ あむ♥」
「ええ、大掃除は私たちに任せてくれていいわ、ちゅ~~~ん♥」
「♥♥♥♥♥」
そして五人はそのまま、見せつけるように舌で唇で、そして―――――
『あぅ……あ……あ……』
『……悪夢だ……』
五人全員の行為を見せつけながら、最後にシャイニが……
「そういうことだから、さようなら。タッく……タンショー王子と、サンシャイ将軍」
もはや愛称でも父とも呼ばずに決別の言葉を告げ、ショックを受けた表情で固まる二人を無視して、シャイニはペンダントを握りつぶして粉々にした。
こうして、ある意味で自分がフェイトに告げた思惑通りに事が運び、戦乙女勇者と連合軍の同士討ちという展開に進んでしまったのだが……自分は嫌な予感が拭えない。
最終決戦の時点で五人全員の力を合わせればで既に大魔王たる自分以上の力を持っていた小娘たち。
今回のことで、まだまだ隠されていた力を更に覚醒させてしまったかもしれない。
潰し合わせて、あとで魔王軍が漁夫の利をとも思ったが……もはや連合軍では潰し合えないほどの力があるのではないかという予感が拭えぬ。
ひょっとしたら自分は、決して開けてはならぬ箱を開けてしまったのかもしれぬ。
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