第36話 勇者の決起

 100本作れば十分。だというのに、「予備も作ろう」と5人が言うもので、結果的に十分すぎるほどの「精薬」を製造した。

 全て完了したころには、もはやこやつら全員が百戦錬磨の逞しき淫靡に満ちた笑みを常に浮かべるようになった。


「さて、これで準備完了だね、皆、ジャーくん」


 久々にこやつらが勇者として戦っていた時の衣装を見た。

 そもそもこの数日、服を着てすらいない、裸族のようなものだったからな。

 自分も服を着たのは久しぶりだ……


「コッチのジャーくんも今日まですごい頑張ってくれたから一休みしててね♥ お掃除完了したら、た~~~~っぷりご褒美でムフフなことしてあげるから♥」


 と、いやらしく微笑んで自分の股間に慣れたように語り掛けてくるシャイニ。

 こやつら、この数日の間で何度したと? まだ足りぬと?



「アナタ、戦の時は常に私とラブリィが傍におりますので離れないでくださいね? 3人でスーちゃんに乗って、遠距離で私が魔法で皆を援護し、そしてアナタからの指示も皆に即座に伝えます」


「ジャーくんはラブリィたちが守るからね♥ そうだ、何だったら昔の顔見知りのゴミムシさんたちに、ラブリィとジャーくんのラブラブなシーンを見せつけるとかどう? 精神攻撃になるかも」


「確かに、シャイニのとこの王子とか将軍とかはアレでかなりメンタルやられてたと思うし、いいんじゃないかしら? 私もやろうかしら?」


「ヤッてるところを見せつけるのアリ」


 

 そして、四人もまた当たり前のように自分に群がってくる。

 今から万の敵と……しかもかつての仲間や家族だった者たちと戦うというのに、こんなことで大丈夫なのかと思うところだが、正直むしろこの方が敵にとって厄介だろう。


 何故なら本当にこやつらは昔の仲間や家族に対して情を捨てている。


 そして、極めつけはこの数日間濃密濃厚に自分と交り合ったことで、こやつらはもう自分との性と快楽に溺れ切ってしまっている。


 まるで息を吸うのと同じように自分からあらゆるものを搾り取ることが日常化し、それが幸福となってしまっている。



「よーし、みんな、いっくよー! 過去の憂いを綺麗にお掃除して、これからの生涯ジャーくんとラブラブラブラブラブラブラブ~~~~♥ なエターナルラブライフを手にするために、やってやるぞー!」


「「「「おーーーーっ!!」」」」


「そして、見せつけてやろう! 向こうの人たちは未だに人間だとか魔族だとか古臭い種族の壁に囚われている。でも、私たちにはそれはない。私たちは戦い、ぶつかり合いから始まり、そこから愛し合い、その壁を乗り越えたの! 正義も悪も光も悪も、全てを乗り越えた私たちに敵はない!」


 

 相手への情けを失った勇者……しかも更なる覚醒状態という状況……連合軍にとって最悪だろう。

 そして自分を含めて円陣を組んだシャイニたちは……



「1!」


「2!」


「3!」


「4!」


「5!」



 こやつらの士気を高めるための儀式のようなものなのだろう。

 こういうところは何ともまだまだ青臭い小娘たちなのだが……



「「「「「………じ~~~~~」」」」」


「ぬ?」



 するとそのとき、5人が一斉に自分を見てきた。

 何だ? 

 

「ほら、ジャーくん」

「アナタを待っているのですよ?」

「ほら、ジャーくんもぉ~」

「私たちはもう家族なのよ?」

「だから一緒に」


 ……は?


「な、なん、なんだと?!」


 こやつら、この青臭い円陣を自分もしろと?

 いや、腐って堕ちても勇者だった者たちが大魔王たる自分と円陣というのはどうなのだ?

 できるわけが――――



「「「「「やりなさい♥」」」」」

 

「……6……ッ、くぅ……」


「「「「「スーちゃんも」」」」」


「ガウ(7)」



 やらされた。



「敵は世界連合軍ッ! 全員まとめてぇ~~~~」


「「「「「かかってこいいいいいいいい!!!!」」」」」



 そして、天にも届くようなエネルギーを込めた叫びを小娘たちは放った。

 これが勇者たちの決起……


「よっしゃ、行くよぉ! アネストちゃん、敵の位置は?」

「半日後には『狩場』に着くでしょう」

「よーし、いっぱい射っちゃうよぉ♥」

「スーちゃんもジャーくんと一緒に良い子にしてなさいよ?」

「大丈夫。スーちゃんも私たちが守ってあげるから」

「グルウウ(旦那ぁいいんですか?)」

「……ふぅ……やれやれ」


 そして、改めて自分は思った。






 いかん、負ける気も手こずる気も一切せんのだが……

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