第22話 偽物の愛
宿敵、好敵手、因縁、天敵。
あらゆる言葉で形容可能な勇者という存在に対し、大魔王たる自分は……
「愛する……そなたたちの唇をもらいたい……」
「ジャ~くん♥」
「シャイニ……小さく柔らかく可憐なるこの―――」
「♥♥♥」
ついに唇同士を重ねてしまった。
これまで、頬や首筋や額までに留めていたキスを、こやつらの唇に、自分から自分の意志でやってしまう。
これほど屈辱的なことがあるものか。
もはや何世紀年齢が離れているかも分からぬ人間の世間知らずの小娘に、本心ではない甘い言葉を囁き、抱きしめ、頭を撫で、優しく、そして徐々に濃密濃厚な口づけを交わす。
「わ……アナタ! つ、次は私を、はやくはや―――んむっ!?」
「ん……慌てるな、アネスト。今宵はお前たちを余すことなく愛し喰らうと言うたであろう?」
「はっ♥ はっ♥ はっ♥ はっ♥ ジャーくぅん、ラブリィにも、もっと激しくて甘いのが欲しいなぁ~んむっ!?」
「ふっ、百年早いぞ? そなたに耐えきれるかな?」
「んむぅん~~~~~♥♥♥ ぷはっ、しゅき♥ だいしゅき♥ ちゅき♥ だいちゅきすぎりゅ♥ ジャーくん♥」
「自分も愛している……」
「もっとぉ~♥」
「分かっている、ん」
今すぐにでも細胞すらも死滅するほどの一撃で自分を殺して欲しい。
記憶の全てを抹消して欲しい。
「うぅ、嬉しい……ついにキス……ジャーくんからのファーストキスだよぉ♥」
「これが夫婦の口づけ……ん♥」
「ねぇ~、もっとぉ、ラブリィにラブラブなキスをぉ♥」
「スキスキスキスキスキスキスキー♥」
「もっと、れっ、てして♥」
おぞましい。
大魔王たる自分が、男娼のような行い、甘く気障なセリフをツラツラと並べて小娘たちを堕としていく。
一周したら、また最初からまたもう一周と小娘たちとの口づけを延々と続ける。
そして、二週目以降からは、抱きしめたり撫でたりしていた手で、小娘たちのまだ発展途上の身体に手を伸ばしていく。
「ジャーくぅん……ジャーくんはやっぱり……エッチだよねぇ~」
「……そんなことはない」
「え~? こんなに女の子に対して積極的で……しかも……うまいんだもん!」
自分でやらせているではないか……精一杯やれと……だから……
「女性の服を脱がせるのも慣れていると思います」
「なんかちょっと悔しいかも」
「べ、別に昔の女のことを根掘り葉掘りは聞かないけど……ちなみにまだその女とか生きてる?」
「私たち初めてだからジャーくんも初めてが良かった。でも、ジャーくんエッチ得意なのも興奮♥」
何故、この指先は下級の魔法すら放てぬのだ。
何故、この指先はこれほど無防備な小娘たちの頸動脈すら切れんのだ。
何故、この指先は無防備に晒されている小娘たちの身体を抉れぬのだ。
何故、この口は噛むことすらできんのだ。
いっそのこと、下衆な男として、こやつらを完全に堕とすことを考えるか?
それとも、アネストを見て思いついた、互いの嫉妬心を煽っての同士討ちを?
いずれにせよ……
「はぅ、ジャーくん……もう私たちだけを見てるって言って」
「昔はもう問いません。大切なのは未来」
「ジャーくん、ラブリィはジャーくんとの子供をいっぱい生みます」
「あなたのことは、絶対に幸せにするから……邪魔する奴は魔族も人間も殺して必ず守るから……」
「一生好きでいて」
いずれにせよ、こんなものは根本的に何もかも間違っているのだ。
たとえ、自分自身の誇りや主義に反したとしても、自分は――――
「今宵より自分が愛する女はお前たちだけだ……」
「「「「「よくできました♥ んっ♥♥♥♥♥」」」」」
ただただおぞましく淫らで品のない行為と、未開発の小娘殿の嬌声だけが耳に届いていた。
だが、その時だった。
――大魔王様……ご無事でしょうか……大魔王様
「ッ!?」
――最終決戦地の残留魔力を追って、ついにあなた様の魔力を感知しました
それは突如として自分の脳内に響いた、かつての忠臣からの念話だった。
――あとがき――
本作、色々とギリギリを意識してますが、ノクターンノベルズという場所で全解禁バージョンも始めましたので、興味ありましたらこちらもよろしくお願いします。
https://novel18.syosetu.com/n0709hw/
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