第20話 風呂はいつも憂鬱

 屋敷の風呂はそれなりの広さ。

 魔王城の自分専用の風呂よりは狭いが、それでも複数人が余裕で入れるほどの広さ。


「ふぅ……やれやれ」


 脱衣所で纏っていた衣を脱ごうとする。

 すると……


「待ってください、アナタ」

「ジャーくん、勝手に脱ぐのはダメ」


 分かっていた。こう言われることは。

 しかし、分かっていてもやるというのは、宝玉によってこやつらの命令に抗えぬ自分のできるせめてもの抵抗。

 そして……


「二人で脱がせます♥」

「ジャーくん、ジッとしてて……ぐふ」


 目を血走らせ、頬を紅潮させ、鼻息荒くし、そして涎まで出ている。

 あの美しさと可愛らしさを伴わせ、そして強く輝いていた勇者たちがコレか……


「脱ぎ脱ぎですよ」

「よいではないか~♪」


 こやつらの手が自分の纏っているものを次々と剥いでいく。


「ああ、いつみても細身のようで引き締まったお身体……この腕……足……スリスリ♥」

「腹筋綺麗……ぺろんちょ♥」


 悍ましい……剥かれてさらけ出された自分の肌に顔を擦りつけたり、舌で舐めたりと……決して声など出さぬ。


「さて……お待ちかねの……ジャーくんのジャーくんも御開帳ですね」

「んふ~♥」

「うふふふ、こんばんは」

「ジャーくんのお尻も素敵♥ ん~~~」


 出さぬ! 声など出さぬ! ナニをされようとも、どれだけの辱めを受けようとも耐えきって見せる。






「ぷはっ、さて……そろそろ、私たちの番ですね」


「ん、ごちそうさま。はい、ジャーくん、脱がせて」



 そして、今度はこちらの番と、こ奴らは両手を広げて自分を待つ。

 

「さ、ジャーくん。いつものようにお願いします」


 上下青い下着。髪の色と併せたものなのだろう。

 自分は無言を貫き、ホックに手を伸ばしてブラを外し、その流れで両脇の部分を持って下着を下までズリ降ろした。



「んふふふ……さぁ、アナタ。黙ってないで妻の身体を褒めてください♥」


「……人形のように美しく、そして透き通るような白き肌。胸の形、そして小ぶりな尻は、あらゆる男が情欲を抱くであろう」


「ありがとうございます。でも、私はアナタが悦んでくださればそれでよいのです。この身体、胸も、お尻も……ココも、ぜ~~んぶアナタのモノですから♥」



 無言は許されないのも相変わらず……


「ジャーくん、次は私」


 そして、キルルが早くと急かしてくる。

 さらしで巻いた胸と、東洋の「ふんどし」という独特なもの。

 これはブラや下着のように指先一つで簡単に脱がせられるものではないので、少々手間だ。

 まずは両手を上げるキルルの胸のさらしを剥がしていく。

 

「ん♥ ん~……イジイジ♥」

「…………」

「ツンツン♥」

「…………」

「もみもみ♥」


 そして、ただでさえ脱がすのが面倒なキルルがもっと面倒なのは、こやつは黙って脱がされずに、こちらの身体に触れてくること。

 それを無視して無言で対応するも、不快なことには変わりない。


 それに、こやつはやはり性に対して興味津々というか、純粋にいやらしい女なのだろう。


 この数日で分かったこと。

 戦乙女勇者たちの中で、いやらしい順に並べると……


 1位:ラブリィ

 2位:キルル

 3位:アネスト

 4位:シャイニ

 5位:ディヴィアス


 こんなところだろう。まぁ、五人あまり変わらん気がしないでもないが、それでも1位と2位は日常生活の中で何の前触れもなく唐突にこちらの身体の触れられたくない箇所に触れてきたり、時にはねちっこく、時には凝視したりしてくる。

 さらには……


「ジャーくんも♥」

「…………」

「あ、ココ……剃って♥」


 こちらの手を勝手に取って、己の身体に……今更この程度のことで狼狽える自分ではないが、それは顔に出さないだけであって、何とも感じないわけではなく、不快なことに変わりない。


「ジャーくん、ご飯食べたらベッドで……全部いっぱい触ってね?」

「……………」


 いずれにせよ、五人まとめて今日は相手をせねばならぬ……この程度で不快だのなんだのと言っていればやってられん。


 何とか耐え……いや、耐えずに死にたいのだがな……


「さて、いつまでも触り合いっこしてないで、早く体を洗いましょう、アナタ、キルル」

「ん、じゃあ、いつもみたいに泡を体につけて……」

「ええ。三人で泡スリスリ洗いをしましょう♥」


 いずれにせよ、今晩のことを考えたら、いつものこの泡塗れの身体で擦り合うふざけた洗い合いもまだマシか……

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