第17話 殲滅
まだ若き少女たちと言えども、それこそ戦争経験は幼少期の頃から積み重ねている。
千人だろうと、戦争経験もあまりない異大陸の兵たちなど所詮は烏合の衆。
「そ、そんな、隊長が……うそよ、あ……ああ」
「う、うわああああああああああああ! 隊長ぅううう!」
「な、こ、これは、夢!?」
「何がどうなって……」
将をいきなり討ち取られて、怒りに任せて戦うわけではない。
ただ戸惑い怯え揺らいでしまっている。
それではダメなのだ。
「忍法・超多重影分身の術」
「「「「ッッ!!!???」」」」
そして出た。
隠密専門の暗殺者。忍者戦士と呼ばれたキルルの真骨頂。
実体とも言える分身体を作り出す術。
実体の10分の一程度の力だが、その分身体を一度に50は作れると聞いたことがある。
「殺す」
「斬る」
「嬲る」
「炙る」
「折る」
「潰す」
それでも、キルルのレベルで、しかも動揺している集団相手には効果的。
「ぎゃ、な、なんだこいつら、急に増えた!?」
「ひ、怯むな、数はこちらが―――げぶっ?!」
「シーヌ副長がやられた?!」
「ひいい、なんなんだこいつら!」
「くそぉ、このガキィ! うおおおお、殺してやる殺してや―――ぶぎゃ!?」
密集していた敵本陣のど真ん中で、突然将が討たれて、50もの敵が出現。
ただでさえ経験不足で混乱し、指示系統も崩壊した兵たちに陣形もクソもない。
「忍法・かまいたち」
「忍法・火球礫」
「忍法・地割れ」
「忍法・千殺苦無乱舞」
そこに、逃げ惑う者たちや果敢に立ち向かおうとするものたち含めてキルルは命を摘み取っていく。
今の一瞬で百人は一気に死んだ。
「なんだ!? 前方の方で何が起こっているんだ!?」
「ひ、人があんなに空に?!」
「火が、風が、ど、どうなっているんだ!?」
「大変だー! た、隊長と副長が、う、討たれたと!」
「ば、なかな!? 隊長が!? そんなことが……」
そして、後方では事態の状況把握ができず、ただ前方で起こっている悲惨な光景にどうすればいいのか分からず立ち止まっている。
「魔族だ……これが魔族の力……殺される……このままだったら、私たち全員殺されるわ!」
「殺され……る」
「ひィ!?」
「ここは一度撤退した方が……」
「バカな! 仲間たちを見捨てろと!?」
「いや、一度王都に戻って態勢を……」
そして……ここまで甚大な被害を与えられた状況下で、未だに混乱が続いている軍などもはや終わり。
既に撤退するとかどうとかの声まで聞こえるほどだ。
特に今この場には……
「天体よ……来たれ……無数の箒星よ……終末伝える破滅への使者」
尋常ならざる魔力を漲らせるアネスト。
本来、こういう魔導士の攻撃を防ぐために、戦争ではどの軍にも攻撃専門のほかに防御専門の結界魔法部隊なども存在している。
しかし、今のこの軍は全て完全に無防備。
指示をするための指揮官もキルルが率先して討ち取っている。
ここまでくれば……
「キルル……そろそろですよ」
そして、ここでアネストがテレパシーをキルルに送った。
すると、キルルからも……
『問題ない。そろそろだと思って、本体の私は既に離れてる』
「うふふふ、流石ですね、付き合いが長いだけあります……まぁ、私の旦那様もクールな顔して最初から流れが全部分かっているようで、うふふ♥」
ここに来るまでの間、キルルとアネストの間で作戦会議のようなものはしていなかった。
話をしなくても分かるということ。
まぁ、不本意ではあるが、この軍が視界に収まった時、自分と抱き合っていたキルルが唐突に姿を消した時から自分もこやつらの考えが分かったがな。
それほど自分たちは殺し合いをしてきたのだから……
「では、一気に殲滅していきますよ! 堕ちなさい、破滅への使者よ!」
空が……空気が……大地が震える。
「な、なんだ!? 何が起こってる?」
「地揺れ? なんで?」
「土魔法か?」
「ぐっ、う、馬が暴れ、くそぉ!」
「ん……? おい、みんな……空を……」
「え?」
そして、混乱する兵たちも何かに気づいたようで、皆が次々と空を見上げ……
「アレは……何なの?」
「アレは……!?」
「ちょ、こ、こっちに―――ッ!?」
空から降り注ぐ……
「惑星大魔法・ハルマゲドン」
無数の隕石。
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