第3話 みーんな持ってます

「みーんな持ってます。ミミズもオケラもアメンボも持ってます。どう…わかったかな?」


 まわりのおかあさん達はさっきよりもっとわらっている。なんだろう、大人はもうわかっているのかな? それにオケラって…


「ママ、オケラってなに?」

「知らないよね~」

 まわりの小さい子もおなじように自分のおかあさんにきいている。こどもだもん、よくしらないよ。


「ねえ、ミミズもアメンボもそれを持っていて、もらったもので重いの? 」


「そう!」

 ママは大きく大きくうなずいた。そして手をいっぱいに広げて

「みーんな持っていて、それで重くて誰にもあげられないの。それにすっごく大事なの」


 ママはぼくの目をみながらちょっとこわいくらいまじめに言った。


「実はたっちゃんのそれがなくなったら、ママもパパも自分のそれをなくすよりすっごく悲しくてつらいの。だからたっちゃんのそれは絶対にママもパパも守るし、どんなおかあさんもそう考えているんだよ」


「そんなに大事なの? そんな大事なものぼく持っているの? 」

「うん、でも大丈夫だよ、ママとパパが守るし、たっちゃんはきっとその大事なものに気づいているよ」

 そうかな…、まだわからないんだけれどもな。


 ぼくはまわりを見た。たくさんのおかあさんがいて、少しのこどもがいる。

おかあさんたちはどの顔もニコニコわらっているよ。ちいさなこどもがいるおかあさんは自分のこどもに

「わかった? 」

 ってきいている。


 なんだろう?

 ぼくはママの大きいおなかを見た。

「ねえ、ママ、それってさ…」

 ママはおなかをやさしくなでている。


「それって、赤ちゃんも持っている? おなかのなかにまだいるけれど、もうもっているの?」


「どう思う? 」

 ママのニコニコがひろがった。


「持っているとおもうよ。だってみーんなも持っているんだよね。だったら赤ちゃんもきっと持って大事にしていると思う」


「そうね、きっとすっごく大事にしているよね。さて、たっちゃん…」


 ママはぼくにウィンクをした。


「赤ちゃんはおもちゃを持っている? 服も持っているかな? ハンカチもくつも持っているかな?」


 

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