第5話 不思議な世界
眩しい。すごく、眩しい。これでは眠ってなどいられない。
私は半ば苛立ちながら目を開けた。最初に視界に入ったのは、黄色だった。黄色の中に、まるで雲のように白色の物体が浮かんでいる。絶対に私の部屋の天井ではない。
私はひとまず体を起こす。どうやら屋外にいるようだ。私の周りには砂のような形状をした青色のものが散りばめられている。見渡す限りの青だった。景色からすると、砂漠に見える。黄色の空に青色の砂というおよそありえない組み合わせではあるが。
これが死後の世界なのだろうか。死んだらそれで終わりではないのか。
おもむろに立ち上がり、歩き出す。この青い砂は、思っていたより弾力性がある。一歩踏むたびに深く沈み、足を持ち上げるときに大きな反動をもたらす。なんだか浮いているような、足取りが軽いような、そんな感じだった。歩くだけで楽しくなる。
私はまるで歩行を覚えたての子供のように、ただただ歩いた。顔に自然と笑顔が広がる。
青と黄色に囲まれて、長い間歩いていた。青い砂に終わりはなかったし、黄色の空に果てはなかった。どこまでも単調で、あるいは退屈で、代わり映えのしない世界だった。でも私にはそれで十分だった。あの女も黒髪ロングもいない。たったそれだけでこんなにも幸せになる。
私の気分は人生で最高潮に達し、青い砂の中に飛び込んだ。顔が砂に埋まると、外に干した洗濯物の香りがした。そのまましばらく匂いを嗅いでいたが、息が苦しくなってきたので体を反転させる。視界の端に何かが映る。寝ころんだままそれを拾う。
ピンク色の種だった。
見た目はピスタチオに似ている。殻がピンクで、中身はよく見えない。少しの隙間から中を覗き込む。漆黒の闇が私を見ていた。私はその中に吸い込まれ――
「……っ」
怖くなって種を目から離す。それでもなぜか捨てるのは嫌で、制服のポケットに入れた。
どっと疲れが襲ってくる。眠気を感じ、私は目を閉じた。
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