「銀河鉄道の夜」の「版」について
清瀬 六朗
第1話 「銀河鉄道の夜」の原稿
「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の生前には出版されることがありませんでした。
その原稿は、おそらく一九二四(大正一三)年に最初に書かれて、賢治の晩年まで書き足され、手直しを繰り返されました。
そんなに長い物語ではないですが、十年足らずのあいだ、断続的に書かれ続けた、ということになります。
いまのように、保存してあるファイルに書き加えたり、ファイルのテキストを修正したりして行くわけではありません。
まとめて書き足すところは別の用紙に書き、直すところは原稿用紙にそのまま書き込んだりしています。
直したところをさらに直している、という箇所も珍しくありません。
しかも、書いている用紙が原稿用紙とは限りません。
いまの「銀河鉄道の夜」の最初にあたる「午後の授業」の場面や「活版所」(印刷工場でのアルバイト)の場面などは、ほかのボツ作品の裏紙を使って書いてあるのです。
裏ですから、マス目も罫もありません。
たぶん、賢治は、そうやって作成した原稿を最終的には清書して、出版に回すつもりだったのでしょう。
ところが、「銀河鉄道の夜」は、たぶんその清書の段階までは行きませんでした(「清書はしたのだけど
したがって、私たちのもとに残っているのは、その清書前の原稿だけなのです。
つまり、用紙もばらばら、一部を除いてどういう順番になっているかもわからず、直したところもどう直すつもりだったかとてもわかりにくい。
そういう原稿として、「銀河鉄道の夜」の原稿は残っているのです(ちなみに、この原稿のコピーは宮沢賢治記念館から『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の原稿のすべて』として刊行されています。私もそれを見ながらこの文章を書いているわけですが)。
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