最終界—4 『朝日昇流』
「高校にこの教室が作られてるって事はやっぱり朝日は私に……いや白波に心を囚われていたらしいね」
「あぁそうだ……囚われた結果この世界でお前を俺への殺意に囚われさせた……!」
「……ここで何をしたって現実の朝日には何もッ——いや……いい」
アーマードハデスは廊下側の窓に姿を反射させる自身とアーマードナイトの姿を見て、何処か哀れむ様な声で呟き……
「私達は結局は朝日の心が作り出した虚像……だから私は朝日への殺意を受け入れるしかないんだよねぇ!」
そして覚悟を決めた様に……絶叫混じりで言い放ち、ハデスサイクラーを振り上げてアーマードナイトに向かって跳躍する。
「ゼッ……白刃取りッ……まさか実際にやる機会が来るなんてなァ!」
頭部とハデスサイクラーの刃が接触するすんでのところで白刃取りでなんとか掴み、止める事が出来た。
それでもハデスサイクラーは刃の回転を止めたりなどはせず、至近距離で金属の擦れ合う不快音が発せられる。
「さっきから思ってたけどッ……随分と楽しそうだね朝日!」
「……お前と同じだ」
「……あ」
アーマードハデスはアーマードナイトの冷たい声を聞いて思わずハデスサイクラーに掛ける力を無くし、刃の回転を止めてしまう。
「今だッ……!」
「ッ……」
「ゼァァァアア!」
その隙にアーマードナイトは刃の届く所から脱出……アーマードハデスの右側へと移動し更に渾身の飛び蹴りを放つ。
アーマードハデスは無防備にその攻撃を受けてしまい勢い良く吹き飛ばされ、壁や窓を木っ端微塵に砕いて空中で身を回転させながら……風を切り裂きながら飛ばされていく。
「しるッ……ぅ……ここどこ……」
アーマードハデスはショッピングモールの屋上に墜落し……何度か転がってから立ち上がろうとした——顔を上げようとしたその時……
「ナイトッ——」
「ッ……!」
アーマードハデスの前方にはもう既にアーマードナイトが存在し……更に右足を赤の閃光で覆い、必殺のキックを放とうとしていた。
「ハデスサイクラーッ……!」
「メイルパージ!!!」
アーマードハデスは咄嗟にハデスサイクラーの刃を回転させた状態にしてから投擲し、キックを阻止しようとした。
だが、アーマードナイトはメイルサイクラーを肉体から弾き飛ばし、それに迫るハデスサイクラーを巻き込んで吹き飛ばし……そして——
「エンッ……ド!!!」
「がづっぁぁぁ!」
太陽の如く煌めく真紅の光はアーマードハデスの胸アーマーに直撃する。
アーマードハデスは両足で床を抉り取りながら吹き飛ばされ……その勢いが収まる頃にはもう既にメイルサイクラーは砕け、辺りに散乱していた。
「これで終わりだ……俺もお前も! そしてこの極夜もッ……行くぞナイト!」
「……あぁ!」
ずっと……この最後の——最期の戦いが開幕してから沈黙を貫いていた……出来るだけ俺と白波、偽りの2人の邪魔をしないようにしていたナイトはどこか気まずそうに、それでも威勢良く返事をした。
「ナイトッ……サイザーッ!」
よろめくアーマードハデスの目の前は疾走し、そして右手にナイトサイザーを作り出し、その刃を黄色い煌めきで覆い……左足で地面を蹴り、跳躍しようとした——その時だった。
「ッ!?」
「……極夜の終わりに間違いは無かったね」
俺の左足は地面に沈む。
この灰色の世界の墓地から本物の世界へと落ちていった時と同じ様に……世界が不安定になった際に起きる事情に巻き込まれていた。
「ナイトサイザー!」
咄嗟に右手のナイトサイザーを飛翔させて屋上から離れ、この世界から落とされアーマードハデスから引き離される事を回避しようとする——が。
「シルッ……アアァァァ!」
「しまっ——いやナイトサイッ……!」
「ハデスサイクラー!」
突然アーマードハデスは姿を消し、そして背後に現れる。
反射的に、攻撃を受ける前に振り返る……そしてその動作と共にナイトサイザーで斬り掛かろうとした——が、瞬時に作り出されたハデスサイクラーの刃にその三日月型の刃は切り飛ばされ、空高く舞わされ……展望台の方へと弾き飛んでいく。
「シルァァ!」
「ッ……ァァアア!」
アーマードハデスはそのまま直前の……ナイトエンドの仕返しとでも言う様にしてアーマードナイトを蹴り……突き飛ばす。
「ッ……このままじゃまた夜空の下にッ……そしたらアーマードハデスから離れる事になる! おいナイトッ……頼む……なんでもいいからなんとかしてくれ!」
「そのつもりだッ……お前が墜落する瞬間! 俺達の背に当たる付近だけを無理矢理硬くする……!」
「分かッ——ずぁぁあ!」
そんな事を話してる間にアーマードナイトは展望台に墜落する。
ナイトの発言通り展望台は他の地面とは違い硬くされていた。
「今はなんとかなった……が、もう時間が無い……今のこの状況は不安定になっているだとかじゃなくッ……」
「本当に”崩壊”してる——そういう事か?」
崩壊している様に見えて、本当は崩壊なんてしていなかったありのままの世界。
それが実際に崩壊し、本当の世界が崩壊させられる——それだけは阻止しなくてはならなかった。
「……そういう事だ」
「ならッ……すぐに片をつけるしかないな」
そう言って、再びアーマードハデスとの戦いに臨もうとする姿勢を演出した……次の瞬間。
「もう戦いに続きは無いよ……!」
アーマードハデスは突然、虚空に……何も存在しない空白の空間の中に姿を現す。
そして……その空白はアーマードナイトの上にあった。
「ぎィッ……」
アーマードハデスは倒れたアーマードナイトの上に跨り……そしてその両手でアーマードナイトの首を掴み、強く締め付ける。
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