最終界—1 『朝日昇流』
——
「……せめて……出来ることを」
展望台へ続く階段の前、啓示は夜空を見上げながら呟く。
その手にはスマホが握られており……その画面には着信中の文字が表示されていた。
——
「私を終わらせる……ねぇ。私を倒す事なんて出来るの? 精神的な方でも戦闘力的な方面でもなく……方法があるのかどうか、そういう方面でさ」
「夜空を貫く時に思い付いた……正解かどうかは分からないけどな」
白波のその問いかけてくる声は直前までとは違い、状況を愉しむ風に……演じている様であった。
「私は答えを知ってる……正解かどうか教えてあげるよ」
「ナイトサイザーだろ?」
「……正解」
白波は俺の回答を聞き、首を縦に振りながらも不思議そうな表情を浮かべる。
何故俺がナイトサイザーをアーマードハデスを倒す為の手段だと判断したのかと言えば……
「初めて戦った時、ナイトサイザーで首を切断しようとした時……自分から首をねじ切り飛ばしたよな?」
「あー……」
「あの時は戦闘中で思考の余裕が無かったから気付けなかったけど……冷静に考えたらおかしいよな。首を飛ばしても問題無いならあの刃を避ける必要なんてないんだ」
「偶然とはいえその失態を犯さなければ敗北する様な状況に追い込んでたなんて……流石は全てのワールデスを殺しただけあるね」
「……それともう1つ理由がある」
「もう1つ?」
もう1つの理由。
それは根拠になる様なモノなどでは決してない……が、今語った理由以上に説得力のあるモノである。
「黄泉の鎧……それは多分俺と啓示が白波の考えた最強のラスボス……とやらの能力を黄泉の力だと予想したからだ」
「懐かしいね……外れだけど」
「それが当たってるかどうかはどうでもいい……能力が外れていようと、俺が最近の能力を知らなかったとしても……」
そう、能力の詳細なんてどうでもいいんだ。
大切なのは攻略法……倒し方なのだから。
「ラスボスについて1つだけ教えてくれたもんな……白波」
「……覚えてたんだ」
「忘れたくても俺の心はこの橋に……白波に囚われてるからな……忘れられるわけがない」
白波が昔、展望台にて1つだけ教えてくれた事、ラスボスを倒す為の武器が鎌である事……きっとそれが俺の夢としてこの世界に反映されたのだろう。
「ま……それが分かってもアーマードハデスには勝てないだろうけどね……私の根性も限界だからさ」
「俺はこの戦いで命を散らす……だから命尽きるまでアーマードナイトの力の糧に出来るッ……! だろ……ナイト?」
「……そうするしかないだろうな」
つまり、両者共にこれまでより強くなって戦うことになる……最終決戦に相応しい条件と言えるだろう。
「それじゃあ……始めようか! 私はもう
限界だよ朝日!」
「世界の方も限界だからなァ……!」
俺と白波はその場からはまだ動かず、互いに腰を低く下ろし、それから戦闘を開始する為の……”変身ポーズ”をした。
俺と白波は動作の向きを反対にして両腕を伸ばし……勢い良く大きく、太陽の様に丸い円を描く風にして回転させ、それから両腕を胸の前で十字架の如くクロスさせる。
そして、空虚な灰色の世界の中で……彩り豊かな世界の命運を駆け、2人は互いの象った十字架を見つめ合い——
「「アーマード!!!」」
両者はその叫びと共にポーズを最終段階へと進め……俺は右腕を右斜め下方向に伸ばし、それとは反対に白波は左腕を左斜め下に伸ばした。
「朝日の歪な理想の為ッ……この衝動に身を任す!!!」
白波はハデスの鎧となった煙を纏い……夕焼けに照らされた様に白い装甲に薄い赤色のグラデーションをかけられ……過ぎ去る時間の中で黄色く変色した骨の様な色彩の装甲……そして怒りを象徴する風にして燃え上がる様に赤く輝く……そんな人魂型の目を持つ鎧——アーマードハデス サンセットとなる。
「俺の命を糧とするッ……アーマードナイトの……世界の!!!」
俺はナイトを纏い……夜空色の装甲に銀色の星々の様な煌めきを浮かばせ……胸アーマーに2つの赤い2つの光を持ち、昇る朝日の様に……死に行く星の様に赤く輝く三日月型のバイザーを持つ鎧——アーマードナイト サンライズとなる。
「ゼァァァア……!」
「シルァァア……!」
2人の鎧……世界に夜明けを与える朝日の鎧と世界に日暮れを与える夕日の鎧は対極の存在として、それぞれ橋の対極に立ち、対峙し……そして——
「ナイトサイザー!!!」
「ハデスサイクラー!!!」
互いが互いに向かい、橋の中央に向かい跳躍……飛翔し、それと同時に互いの命を刈り取る為の刃を作り……その手に掴み取った。
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