第34話 ミレニア鉱山
ミレニア鉱山。
かつてミレニアと呼ばれる集落に存在していた鉱山であり、そこには、鉄や銅、魔導具の作成に必要な希少金属などが多く眠っている。
そこには当然、裕斗たちが求めるライトメタルも存在していた。
ということで、裕斗たち御一行は、ライトメタルを採集するべく、ミレニア鉱山に訪れていた。
「ふわぁ~……」
船から降りた後、ハンナは眠たげにあくびをした。そんな彼女を、ともに降りた裕斗は心配げにみる。
「まだ、疲れ取れてないんですか?」
「ん?ああ、情けないんだけどね」
ハハ、とハンナは自嘲気味に笑う。
「あんまり無理しない方がいいんじゃ……」
「いやいや、そんなわけにはいかないよ。私はアルバートの奴と同じく、ライトメタルについて知ってるからね。あんた達ライダーが掘り起こしたのがライトメタルかどうか、判定していかないと」
裕斗はハンナの言葉に?を浮かべた。
「ライトメタルって、そんなに見分けつかないものなんですか?」
「ああ、たとえば、ほらこれ持ってみな」
ハンナはポケットに入れていた金属塊を裕斗に、渡した。
「驚いただろう?それが、ライトメタルだ」
「ええ、はい。……でも、あんまり鉄と見分けがつきませんね」
「そうさ。他の隊員は重さでなんとなく分かるけど、ライダーは魔導騎士越しじゃ見分けつかないでしょ?だから見分けのできる私とアルバートがそれぞれついて、ライトメタルを効率よく採ろうってわけ」
「あ~なるほど」
フムフムと頷く裕斗。
だがその肩に何者かがぶつかった。
「いたっ」
肩がぶつかった方を見ると、そこには一人の男が立っていた。
その男は裕斗たちとは違う隊の隊長だった。名前は確か、アルゴだったか。
アルゴは不機嫌な目で裕斗を見た。
「気を付けろ。異邦人が」
そう言うとアルゴは去った。
「なんなんだい、隊長だからって偉そうに。ユウト、あんな奴の言うこと気にすんじゃないよ」
「いやいや、大丈夫です」
ハハハッ、と裕斗は手を振る。
「あ、ユウトさ~ん」
と、そこで裕斗を呼ぶ少女の声があった。
振り返ると、八重歯がトレードマークの元気っこラウラと、その彼女といつも一緒にいるクール系美少女のシルビアが見えた。
シルビアが話しかける。
「お話し中すみません。魔導騎士に乗る準備ができましたので搭乗準備をお願いします」
「あ、うん」
裕斗はシルビアに対して頷きつつ、ハンナの方を振り返った。
「それじゃあ、僕行ってきますね」
「おう。たんまりとって来いよ」
ユウとは笑いながら「あまり期待しないでくださいね」と言い、シルビアたちに魔導騎士の元まで連れられて行った。
***
『聞こえるかユウト』
“ランスロット”を起動後、裕斗の右耳に付けた通信魔導具から中年の男の声が聞こえた。
「はい、アルバートさん。聞こえてますよ。そちらの方も“ランスロット”の視界が見えてますか?」
「おう。ばっちりだ」
見えないが、アルバートが親指を立てているのが容易に想像できる。
「こんなの付けるだけで見えるもんなんですね」
裕斗は機体越しに機体の目に取り付けられたバイザーを触った。
なんでもこのバイザーを付けることで、それに対応した眼鏡に機体の視覚情報が分かるらしい。
「そういう魔導具だからな。……っと、ルイーゼがもう出てるな。俺たちも行くぞ」
「了解」
裕斗は機体の足を動かし、鉱山に掘られた洞窟の中へと入っていく。
洞窟の中には裕斗のほかにも何人もの騎士隊員がライトメタルの発掘を行っていた。
裕斗たちは皆がやっていないところを探すべく歩を進めた。
やがてまだ誰も手付かずの箇所にたどり着いた裕斗とルイーゼはともに魔導騎士用のピッケルを振るってら問メタルを掘り出した。
やがて、時間が経ち、
「よし、今日はこのくらいでいいだろう」
「フゥ」
裕斗は息を吐き、持っていたピッケルを下ろした。
「ご苦労だったユウト」
モニターに映るルイーゼが微笑みながら労う。
「うん。そっちこそお疲れ。それじゃあ発掘したライトメタルを忘れず持って帰るか」
裕斗はそう返して、ルイーゼとともに船へと戻った。
***
洞窟から出て、魔導騎士から降りた裕斗とルイーゼは、皆に指揮を出しているエルザの元へと向かった。
「ルイーゼたち、戻ったか」
「はい、ただいま。帰ってきてなかったのは私たちで最後ですか?」
ルイーゼの問いにエルザは苦虫を噛んだような顔をした。
「いや。それが、ライトメタルの発掘に向かったアルゴ隊長とトーマス副隊長がまだ帰ってきていないんだ。お前たちは合わなかったか?」
「「?」」
裕斗とルイーゼは互いに顔を見合わせる。
「いえ、見ていませんが」
「そうか。ならば今から通信魔導具で連絡を・・・」
そのときだった。裕斗たちの通信魔導具から連絡がきたのは。
『こちらトーマス!助けてくれ!洞窟の中に魔導騎士が……うわああああ!」
破砕音とともにブツン、とそこで通信は途絶えた。
「お、おい!……魔導騎士だと!?バカな、なぜこんなところに……」
「とにかく助けないと!」
「おいユウト待て!」
エルザの制止を振り切り、裕斗は再び“ランスロット”へと乗り込む。そして、スラスターを噴かし、洞窟内へと引き返していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます