第4話 対峙、そして……
ドッドッドッドっと重い音と共に走る“トリスタン”は国の壁を抜け、森の中へと飛び出す。
少し歩いたところに―いた。
モスグリーン色の鎧を身にまとった魔導騎士……“ソルジャー”だ
ズシン、ズシンと地面を揺らしながらソルジャーは壁の方へと歩いてゆく。
まだこちらには気づいていないようだ。
ルイーぜは“トリスタン”の左の手の平に魔力をこめた。すると、その手に光の矢が現れた。
“トリスタン”は光の矢を弓につがえ、“ソルジャー”に向けて撃つ構えを取る。
彼女の狙いは“ソルジャー”の胸にある赤黒い宝石―
暴走した魔導騎士に付いている
なぜなのかなんて理由は知らない。とにかくそれを壊せば勝負はつく。
ごくん、と乾いた唾を飲み込んでルイーぜは矢を引き絞る。
―まだ、まだ、まだ………今だ!
彼女は矢を放とうとした、その時。
グルン!と“ソルジャー”がこちらを向いた!
「何!?」
―気づかれた!?
ルイーぜは発射を止めようとしたがもう遅く、矢を放ってしまった。発射された弓矢は
バキン!という砕ける音とともに一、二歩下がる。
だが、それだけだ。
右肩に矢が刺さった“ソルジャー”はすぐに体制を立て直し、こちらへ襲い掛かってきた。
「クソッ!」
ルイーぜは毒づきながら弓に矢をつがえ、何本も放つ。しかし、そのことごとくを“ソルジャー”の剣が弾き落としていき、ついに彼女の目の前まで来た。
“ソルジャー”が剣を振り下ろす。
「ッ!」
対してルイーぜは弓を前に出した。
ガキィィン!と、“ソルジャー”の剣と“トリスタン”の弓の間で火花が散り、鍔迫り合いへと発展した。
だが、じわりじわりと、“トリスタン”が押されていく。
―思ったより敵の力が強い!
「ク!…このぉ!」
ルイーぜは雄叫びとともに“トリスタン”が左拳で“ソルジャー”を殴る。それをもろに受けた“ソルジャー”は少しのけぞり、弓から剣を離した。
ルイーゼはすぐさま“トリスタン”を操って後ろへ飛び下がり、空中で2、3本矢を
そして、またこちらに向かって斬りかかってきた。
「チィッ!」
ルイーぜは“ソルジャー”の攻撃を避け、弓でいなしながら低くうなった。
―近くでは防戦一方、離れて
「なら!」
ルイーぜは“ソルジャー”のどてっ腹に思いっきりの蹴りをかます。距離をつくって息つく間もなく矢を作り、弓へとつがえ、放った。
しかし、狙ったのは
今度は狙い通り矢が足を貫き、地面に突き刺さる。
地面に固定される“ソルジャー”。
すかさずルイーぜは新たに生成した矢を弓につがえ、核にではなく空に向けた。
矢を放てば、“ソルジャー”の真上に届く位置だ。
そして、矢に向けてありったけの魔力を流し込む。キィィン、と矢が光り輝いた。
「食らえ!“アローレイン”!」
パッ、と“トリスタン”が矢を放ち、“ソルジャー”の頭上の空へとのぼる。
直後、矢が分裂した。それも2本や3本ではない。何百本にも分裂し、それが“ソルジャー”目掛けて降り注いだ。
“ソルジャー”は矢を剣で弾くように剣を振るう。
だが、この物量ではどうにもならず、逆に剣を弾き飛ばされ、頭を、腕を、胴を貫かれ、そして、
バキィン!と音を立て、
ドゴォォン!と激しい爆音にルイーぜは顔をしかめながらも、勝利したことにホッと一息ついた。
「ぐっ…」
ふいに、軽いめまいがした。おそらく魔力を使いすぎたためだろう。
―この技は使いどころを考えなくてはいけないな……
『無事かルイーぜ!』
隊長の声が通信魔導具から届いた。
「はい、特にケガはありません。今からそちらに戻ります」
『そうか……』
ホッと息をつく声が聞こえる。
『了解した。……よく、やったな』
「……ありがとう、ございます」
よくやった。
その言葉には短いながらも心から自分をねぎらっていることが感じられ、ルイーぜは彼女の人柄の良さを改めて理解し、少し微笑んだ。
そうして、隊長の元へ機体を動かそうとして―
『―ルイーぜ!今すぐそこを離れろ!』
「え?」
どうしてです?そう言おうとしたその時だった。
バキバキバキ!と、木々をなぎ倒すようにして黒い影が飛び出してきたのだ。
すぐにその正体が明らかとなる。
モスグリーン色の鎧。赤い単眼。胸に浮かぶ赤黒い宝石。
そう、それは―
「“ソルジャー”だと!?」
ルイーぜは
しかも、この機体は先程の機体と違い両手に一本ずつ巨大な斧を持っている。
“ソルジャー”は右手に持った斧を“トリスタン”に向けて振り上げた。
「ッ!」
ルイーぜはすかさず機体を動かし、斧から逃れようとする。
しかし完全には避けきれず、激しい衝撃が彼女を襲い、その意識を刈り取った。
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