220921

今日、ぼくはある人と会った。その人と話していて、ぼく自身の過去のことを振り返ることになった。ぼくは実を言うと、過去にものすごく荒れた時代を過ごしていた。仕事は一応していたのだけれど、その仕事が終わると毎日のように近所のスーパーマーケットに行って酒を買い込み、それを呑んでしまうという日々だった。雨の日も風の日もずっとだ。それはぼくが40になった頃まで続いた。だからぼくの20代・30代はぜんぜんロクな思い出がない。もっと極端に言えばぼくには青春というものがない。ずっと思い出したくもない辛いことばかりだった。


酒に呑まれていた頃、ぼくはずっと「こんなところでおれは終わらない。おれはもっとデカいことを成し遂げる人間なんだ。人生、一発逆転してやる」と思っていた。でもやっていたことと言えばぜんぜん先行きの見えない仕事と、あとは飲酒だけだ。本も読まず何もせず、草稿すら書かずに過ごしていたのだから作家はおろか、どんなことだってできるわけがない。おかげでみんながアウトドアだコンサートだと楽しく青春を満喫している中、ぼくは天気の良い日に飲酒に耽ってひたすら管を巻いて過ごしていた。だからぼくは今でも天気の良い日が苦手だ。あの行き場のない怒りを思い出すからだ。


でも、敢えて言えばそんな泥沼状態を生きたことがこのぼくを作っていることは間違いがない。もちろんあんな時代に戻りたいとはまったく思わないのだけれど、でももしトントン拍子で右肩上がりの人生を過ごしていたらと思うと、複雑な気分になる。ぼくの世代の人間はずっと好景気が終わったことで辛酸を嘗めた人ばかりで、一部の人は「バブル景気が続いていればなあ」とも思っているようだ。でも、ぼくは敢えてこの自分の人生を肯定したいと思う。つまずいて失敗して、恥をかいて無駄な時間を過ごしたことでぼくはいろいろなことを学んだ。


今、ぼくは「一発逆転してやる」というようなことは考えない。いや、金も欲しいしもっとやりたいことだってある。でもそれよりも今、ぼくに好意を以て接して下さっている人を大事にしたいと思っている。その人たちのために酒を止めることが今のところできている。そして、この文章もそんな大事な人たちのために(もちろん、あなたも含めて)書きたいと思っている。そして、それがある程度伝わったとするならそれこそ成功ではないか、と思うのだ。ぼくの中のまだ充分に冷えていない感情を言葉にしたいからぼくはこの文章群に「undercooled」という題をつけた……というのは嘘でたまたま流れていた曲から適当につけただけなのが本当だったりする。ごめんなさい。

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