新たな日常
「よし、自己紹介も終わったことだし、今日の朝学活は終わりにするかー。1限目までに友達作れるよう頑張れよー」
新しい担任の先生は、そう言い残すと教室を出ていく。親しみやすい優しそうな先生で、湊斗がほっと胸をなでおろしていると、隣の如月さんがニコニコと微笑みながら話しかけてきた。
「さっきも自己紹介したけど、改めて、私は如月夢。よろしく!」
「俺は佐々木湊斗。…よろしく」
緊張でガチガチになっているせいか、素っ気ない態度をとってしまった。
印象を回復するためと、話したいという望みから、湊斗は積極的に話しかけることにした。
「如月さんは何が好きなの?」
「私はスイーツ! 甘いのも好きだけど甘さ控えめなものも好きだな〜。特に好きなのはクレープ! あの生地がたまらんのよ」
「わかる、クレープめっちゃ美味しいよね。生地はパリパリが好き」
「佐々木くんパリパリ派!? パリパリ派少なくて悲しかったんだ〜。仲間いたよ! めっちゃ身近に!」
如月さんは本当に嬉しそうに笑っていた。とても明るくて、無邪気な印象を受けた。
初めて見たときは退屈そうにしてたので、湊斗はクールな印象を受けていた。なので「意外」という言葉が頭に浮かぶ。
湊斗が色々と考えていると、如月さんも話しかけてきた。
「佐々木くんは? 好きなもの何?」
「…………幽霊、かな」
「幽霊!? もしかしてオカルト好きとか?」
「いや、そういうのじゃないんだ。なんか、『幽霊』っていう存在が好きというか。…その人が亡くなっても、存在や魂が残り続けるってことを表してるような、感じが、する…というか……」
「……」
湊斗は話しながら、言うんじゃなかったという後悔が襲ってくる。しかし、彼女は気味悪がるどころか目をキラキラとさせて迫ってきた。
「いいこと言うじゃん! そっかそっか〜、そういう考え方もあるのか〜! うん、それなら私も幽霊好きになれるかも!」
近づいた顔を離し、如月さんは頷きながら話を続ける。
「私ホラー無理だからさぁ~。怖いものは怖いけど、そういうのなら逆に語り継いだ方が良い存在、みたいな? そう考えると怖くないかもね」
「……」
湊斗は思わず黙り込み固まってしまった。『幽霊』が好きなどと言っても、気味悪がられるか、苦笑いをされるなどいい反応は望めないだろう。
このことを言ったのは、如月さんが初めてだった。湊斗は親にすら言っていなかったのだ。
湊斗自身、それが好きというのは本音ではあるが、何故素直にそんなことを言ってしまったのかはわからない。
そんな彼を、如月さんは気味悪がるどころか自分の考えを褒めてくるのだ。
予想外の反応に固まることしかできなかった湊斗は、驚く反面嬉しい気持ちもあった。
自分の好きなものを認められることが嫌、そんな人などいないだろう。言えば喜ぶ人の方が多いとさえ思う。
その後、湊斗が不安に思っていた友達も、如月さんに加え何人もできた。
湊斗と如月さんの2人は、その後席が離れても交流は続き、会話を重ねていくのだった。
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