決意

 入学してから半年が経った頃。湊斗は彼女と話す日常で、更にその気持ちを確かなものにしていた。


 気づくと目で追っていて、一挙一動がどうしても気になってしまう。


 如月さんは目が合うとこちらに手を振ってくれ、湊人はぎこちないながらも手を振り返す。


 そんな毎日が流れていた。


 授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響き、皆は各々の場所で昼食の準備を始める。


 陽向と律でそれぞれ学校の購買で買ったパンを机に広げ、雑談を交えながら食べ進めていく。


 そんな中、湊斗だけはある一点だけを見つめ、無心でパンを口の中に納めていた。


「――! ――…と! ……なと! 湊斗!!」


「……え!? あ、はいっ! ……って、え?」


「お前、何回呼んでも反応なしって相当だな…………」


 自分の名前を呼ぶ声がし、正気に戻ったように湊斗は応える。


 それを聞き、湊斗の名前を何度も呼んでいた陽向が呆れたように言う。律までもが湊斗に、呆れてものも言えないような眼差しを送っていた。


「どうせ如月さんを目で追ってたんだろ?」


「早く告っちゃえばいいのに……」


「それな。見てるこっちがもどかしいっての」


 2人は湊斗に対して疲れたような表情を浮かべながら、優しく見守るような視線を向ける。


 湊斗にとって、彼女に一目惚れしたことは初めての経験だった。無論、律が口にしたように初恋でもある。


 1年生で最後の行事とも言える文化祭も、来週にまで迫ってきていた。


 つまり、先の冬が過ぎれば同じクラス1年生ではなくなることを意味する。


 このまま時間が過ぎれば、何もできずに終わってしまう。


 でも告って振られるのも怖い。


 友達でいれなくなることも怖い。


 事実、もう失恋しているのだ。しかしその時から少し時間が経っているため、その時の恋心はなくなっている可能性ゼロではない。


 まだ続いている可能性も十分あるのだが……。


「前にも言ったけど、文化祭で告れば?」


「僕もいいと思う。まぁ、決めるのは湊斗だけど」


 陽向の言葉に、お気に入りのいちごミルク飲みながら律も続いた。


「…………うん………」


 2人の言うことにも納得できる。だが、やっぱり怖い。


 まだ怖いという思いが勝ち、告白はしないと考えていた。しかし彼の中で、ある考えが生まれた。



 ――ずっとうだうだして、中学生の頃と変わらないじゃないか。



 湊斗には中学生の頃、好きな子に告白するかしないかとうだうだしていた。しかし、いつの間にかその子には彼氏ができていたのだった。


 そう思った湊斗は、2人にことを伝えようと決めた。いざその場になって、逃げ出さないようにするためだ。


「陽向、律……」


「ん?」


「俺、如月さんに告る」


「…………」


 湊斗の決意を聞いた2人は、固まってしまった。そして陽向は涙目で、律は優しく微笑んで、言ってくれた。


「お前、やっとかよ……。うし、頑張ってこいよ!」


「僕も応援してる」


 湊斗は2人からの応援を受け、文化祭の時を待つのだった。

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