友の言葉

「うわ、湊斗が死んでるよ」


「ほんとだ。何かあったの?」


 机に突っ伏し真っ黒なオーラを放つ湊斗を前に、同じクラスで仲良くなった陽向と律が見下ろす。


「この陽向様が聞いてやろうか?」


 陽向はドヤっというような顔で、湊斗の前の席に座った。律はいつも通り真顔だが、心配する気持ちを口に出していた。


 湊斗はそんな2人に、正直に話した。


「だからそんな落ち込んでんのか」


「如月さんのことが好きなのは知ってたけど、それはキツイね」


 湊斗は律の言葉にピクッと反応した。


 何故なら、湊斗は誰にも言っていなかったのだ。如月さんが好きなことを。


「俺…そんなにわかりやすい……?」


 湊斗の言葉に、2人は同時に頷いた。


 すると次第に、頭へ熱が登ってくる。「女子みたい」と言われてもおかしくないほど、湊斗は顔を真っ赤に染めていた。


「ど、どうせわかんないだろ。俺の失恋した気持ちなんて……」


 湊斗は赤面してることを自覚し、顔を隠そうと不貞腐れながらそっぽを向く。



「でも――気持ちは変わらないんでしょ?」



 律が何気なく放った言葉が、湊斗の胸に強く、深く突き刺さった。


 ……ああ、変わらないさ。


 変えられないよ。


 でも、どうすればいいんだよ。


 如月さんには好きな人がいて、それはきっと俺じゃない。


 好きな人がいるなんて、普通本人には言わない。


 「教えてくれるほど仲が良い」とも言えるけど、「恋愛対象でない」とも言える。


「なあ」


 湊斗の脳内でネガティブ思考が渦を巻いていると、不意に陽向の声が耳に響く。


 陽向の方へ視線を合わせると、そこには笑いも心配の心も宿していないような、そんな表情の陽向がいた。


「お前、告れよ」


「は?」


 陽向の言葉に、思わずキレたようなトーンで返してしまう。


「そんな悶々とするんだったら告って砕けた方が折り合いつくだろ。厳しいこと言ってるのはわかるが、現実的に考えるとそれじゃあ変わらないぞ」


 陽向の言葉はグサグサと湊斗に突き刺さり、反論の声を上げようと口を開く。


 だが湊斗が声を発する前に、陽向がまた言葉を重ねていく。


「それに、好きな奴がお前じゃないって決まったわけじゃない。そうだろ? ずっとそうやってうだうだしてたって、その落ちた気持ちが上を向くなんてないんだよ。体育祭が終わって、文化祭も近づいてきてる。絶好のタイミングだと思うんだが?」


「…………」


 陽向の話に、湊斗は何も言えなかった。


 陽向がふざけて言っていたら聞き流すか反論していた。だが、陽向は真剣そのもの。だからこそ反論もできないし、言っていることもわかる。


 陽向の言葉に、湊斗は更に悶々となるのだった。

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