第53話 先に乗った方が………
「零二くん、あれじゃない」
そんなことを考えながら歩いていると、奏は前にある建物を指差す。
「おー、見た目イイ感じだな」
「ホントだね~」
「そんでもって左前には―――――」
「あるね………」
と、俺達が見上げるのは最後に乗ることになったアトラクションのタワーオブテラー。
地上から約59メートル上がり、そこから一気に急降下するという絶叫系。そこにコンセプトであるニューヨークの廃ホテルが相まって、恐怖感も一気にアップする。
急降下のほうに関しては奏は喜びそうだが、ホラー要素に関しては心配だ。
入ったはいいものの、その場から動けなくなりそう。
「ま、まぁ今は考えるのやめよう!ご飯に集中しなきゃ!」
冷や汗を浮かべながら店内に入る奏。
だがしかし、俺はここで考える。
「奏、先に乗って後からご飯食べた方がいいんじゃないか?」
「ん?なんで~?」
「いや、だってさご飯たらふく食べたと後に激しく上下する乗り物乗ったらさ……想像はつくよな」
絶対に吐く自信がある。
「そうかなぁ~?私は全然平気だけど~」
「いや、俺がヤバい」
奏は全種類食べた後に、あんなの乗ったら苦しいし重力が掛かるから相当ヤバいだろう。
でも、これまで食べまくっても一回転するジェットコースター乗ってなんともなかったから大丈夫なんだろうけど、俺が無理だ。
アトラクションが地獄絵図になる。
「なら、先に乗る?あと10分くらいでパスの受付始まるから」
「そうしよう」
「なんか移動した気持ちはあるけど、やっぱ勇気が必要だね~」
俺の腕に抱きつくと、くっつきながら言う。
「乗っちゃえば大丈夫だろ」
「その前が怖いんだよ~」
「あー、ネットとかに書いてあるからな~口コミ」
「そうそう、それ見てさ。覚悟は決めてたんだけど~、いざその時が来ると足が竦む」
「俺にくっ付いてていいからさ、行こ?それでも嫌だったら別に乗らなくても大丈夫だけど」
「乗る!絶対に乗るけど…………」
さらにぎゅっと抱きついて来て、
「零二くんにくっつかせてもらいます」
どこか得意気にフンスと鼻を鳴らす。
「どうぞ、思う存分にくっ付いてくださいな」
怖いの自体、俺もそこまで得意ではないから奏がこうしてくれた方が安心だ。
とまあ、まだアトラクションまで距離があるのにも関わらず、くっつきながら歩いてる俺達。
これじゃ、手を繋いでるより全然バカップルだ。
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