第52話 充電完了!
「早速向かお~!零二くん行くよ!」
と、ベンチから立ちあがり、俺の手を引く。
「その元気分けて欲しいよ」
半日これだけ動いて元気なんて、その源はどこにあるのか。
本当に分けて欲しい。
「なら、零二くんにも私の元気をおすそ分け~」
「ん…………これで分けてるのか?」
「うん、元気になった?」
奏は俺に抱きつくと、上目遣いでそう言ってくる。
これはものすごく元気が出るな。これまでの疲れが全部奏に吸収されて行く感じ。
だがしかし、周りの視線が痛い!
通りすがる人がこちらに視線を向けてくる。その視線が刺さって痛い!
「元気になったぞ、めちゃくちゃ」
「よかったぁ~、ついでに私も充電中~」
「俺から元気を吸い取る気か?」
「違うよ~、朝から零二くんが足りなかったら、充電させてもらってる~」
俺の胸に顔をうづくめると、もごもごと口を動かす。
「ずっと一緒に居ただろ」
「そうだけどさ~?こうしてくっ付いている時間はなかったじゃん?」
「まぁ、人前だしな」
「だから今のうちに~って」
さらにぎゅーっと抱きしめてくる。
可愛い、とにかく可愛いんだけどやはり周りの視線がいない。
なんだこのバカップルみたいに思われてる絶対。
紛ごうことなきバカップルだけど。
「よし、充電完了!」
パッと顔を離すと、手を繋ぎ直して、
「零二くん行こ?」
前に立つと、半身振り返り前かがみになる。
「そうだな」
その可愛いらしい仕草に、俺も少し笑みがこぼれる。
奏と恋人になって、健全なデートは初めてだが、いいなこれ。
ただの幼馴染だった時にはなかった感情だ。
「零二くん~、今メニュー見直したんだけどさ?フライドチキンとかドリアとかコーンスープもあるっぽいよ?あ、あとおすすめメニューでパストラミビーフサンド?もあるらしい!」
「もしや全部食べる気……………」
「もちろん全制覇しちゃうよ~!」
「どこまでも食いしんぼうだな」
移動の時とか、カップルだったら学校の事だったり最近あった面白い話をするところなのだが、俺達、ていうか奏が一方的に食べ物の話しかしてこない。
前食べて美味しかったお菓子の話とか、ここのお店のパフェが美味しかったーとか。
今だって、これから食べるご飯の話。
それもそれで、奏らしくていいのだが、もっと他愛もない話も一つや2つしたいものだ。
普段はしてるけど、こうゆう時も「学校がこうだ~」とか「昨日友達がね~」とか高校生らしい話をしたい。
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