第23話 こっちの気持ちも考えろ

「はい、どうぞ入ってください」


「おっじゃましまーす」


 玄関を上げると、ノリノリで家に上がる奏。


「あんまはしゃぐなよ、初めてじゃないんだし」


「平日はあんま泊まりなかったからなんか新鮮で~」


 えへへと自分の頭を撫でながら言う。

 いつもテンションが高いが、それ以上に高いと何を言い出すか分からない。

 取り返しのつかないことになる前に、防衛線を張って暴走を阻止しなければ。


「零二くんのお母さんこんばんは~!今日ハンバーグなんですかぁ~!?」


 悩む俺を見向きもしないで、リビングへと顔を出す。


「あら~いらっしゃい~。来るって聞いたからハンバーグにしたのよ~」


「やったぁ~!零二くんのお母さん好き~」


 俺もすかさず向かうと、奏は既にテーブルに座り母親と話していた。


「おま、行くの早いっての」


「ごめんごめん~、美味しそうな匂いに釣られてさぁ~」


「別にいいけどさ」


「おかえり~、早く手洗ってご飯食べなさいよ~」


 キッチンから顔を出す母親。


「あー分かってるって」


 この親…………なんで息子より幼馴染の方を可愛がるんだよ。普通逆だろ。

 促されながらも、俺と奏は手を洗いに行く。


「…………ったくあの親は…………」


 石鹸に手を付けながらボソっと呟く。


「なんで?いいお母さんじゃん~」


 ニヤニヤしながら腰をぶつけてくる奏。


「どこがだよ」


「えぇ~、だって優しいしさぁ?」


「お前にだけ甘いだけだろ」


「そうかなぁ~?」


「そうだ」


 普段はあんな変な話し方なんてしない。もっと普通だ。そこら辺にいる主婦って感じの喋り方。

「あ、お皿洗っといて~」まぁこんな感じ。


 それが、奏が来た途端。顔色を変えちゃってまぁ。

 奏にとってはいいかもしれないが、俺にとってはただイラつくだけだ。


「よし!早速ハンバーグを食べに行こ~!」


 元気に拳を上げてリビングに向かう。


「おいだから行動が早いっての」


「お腹空いたんだもん~、待ちきれないよ~!」


「だからってなぁ」


 言いかける頃には、既に奏は食卓に着いていた。


「ほら~零二くんも早く座りなってぇ~」


「そうよー、早く座りなさい~」


 と、まるで本物の親子の様に笑顔でお俺を迎えてくる2人。

 なんだこの異様な光景。自分の母親と幼馴染が食卓で待っている。

 迎えられる俺の気持ちにもなってくれよ全く。


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