第21話 泊まるから!
「おおおおお面白かったね」
「………そうには見えないんだが?」
映画が終わり、劇場内を出ると、生まれたての小鹿のようにブルブルと足を動かしながら言う奏。
映画自体は面白かった。まぁ、怖かったけど。
でもそれより、奏が可愛すぎてそっちの方に気を取られてしまった。
肩に顔をうずくめてくるし、「きゃっ」とか言って抱きついてくるし、映画そっちのけで楽しんでいた。
「れれれれ零二くんは大丈夫なの?」
俺の腕に辛うじて掴まりがら歩く奏。
「大したことなかったな」
奏のおかげて。
「そそそそうなんだ…………強いね零二は」
「逆にお前はビビりすぎだ」
ホラー映画でここまでビビり散らかす人中々いないぞ?いや、いないかもしれない。
周囲の人に引かれるくらいのビビりようだ。俺にとっては可愛くて仕方がないけど。
「つつ次はどこにいくの?」
「うーん、普通に帰るか?その調子じゃまともに歩けなさそうだし」
「なななんか勿体ない気もするけど、そうしようか」
「だな」
「ででも家でゆっくりできるからそこまで気にする必要ないね!」
「え、家来るの?」
「え、逆に行かないと思ったの?」
それはそうだろ。明日学校だし。
それに来たとしても………することは一つしかない。親もいるからなおさらだ。
「今日はやめとかないか?…………色々問題があるしさ」
「それって、零二くんのお母さんとかのこと?」
と、小首を傾げる奏。
「そうだ」
「それなら安心して?」
バッグからスマホを取り出し、とある画面を見せてくる。
「おい、これって………」
「そだよ?零二くんのお母さんとのLINE」
笑顔で見せてくるのは俺の親とのLINEでのやり取り。
そこには
『今日お家泊ってもいいですか?』
『全然大丈夫!歓迎するわ』
『ありがとうございます!!』
『零二も喜ぶわよ~』
『今、一緒に居るので話しておきます!』
『あら、今日も2人でいるの?ホント仲がいいわね』
『それほどでも~』
と、友達感覚で会話をしている2人。
「裏でこんなやりとりしてたのかお前ら」
やり取りを見て、俺はため息を吐く。
どこまで仲がいいんだよ。幼馴染の親と普通こんなやり取りするか?
しないだろ普通。
仲がいいってレベルじゃないぞこれ。PS3の行列で待っていたおじさんも驚きなくらいだ。
「だから、今日私は零二くんの家にお泊りします!」
主張の激しい胸を張って言う奏。ワイシャツのボタンが弾けそうだ……………って今はそんなこと言っている場合ではない。
泊まりくるという事はそういう事だ。まだ心の準備が出来てない。
その他諸々の準備もだが。
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