第20話 手、握ってくれない?

 これ、相当怖がってるな奏。

 明るく振舞ってるけど、てかいつも明るいけど、今回のは無理をしている明るさだ。


 本当に大丈夫だろうか。

 ポップコーンを買い終えると、上映する映画がやる2番シアターに移動する。


「えっと~、私たちは真ん中の席だから~……………………あそこだ!」


「いい席取れたんだな~」


「空いてる席沢山あったからね~」


 俺達の席は、シアターのど真ん中の席。

 そして手にはⅬサイズのポップコーンとコーラ。映画を見るのには最高のロケーションだ。

 でも、ビビッてこぼさないか心配だ。


「いやぁ~、席に座るとやっぱ怖くなってくるね」


 ジュースを飲みながら奏は言う。


「座らなくても怖がってただろ」


「あ、バレた?」


「バレバレだ。んな無理して見なくてもいいのに」


「ホラーを見ること自体は別にどうでもいいの!零二くんと見ることに意味があるの!」


「映画館では大きな声出すな」


「………あ、そっか」


 声を張っていた奏は、しゅんと小さくなる。

 これがもし恋愛映画とかであったら、最高だっただろうに。

 ホラー。奏が苦手なジャンルとなると映画そのものを楽しめなくなる。

 まぁ、一緒に居る事に意味があるけど。


「あの…………」


 奏は俺の肩を引っ張る。


「ん、どうした?」


「そろそろ中暗くなるじゃん」


「だな、注意事項のやつ流れてるし」


「だからさ………」


 肘おきに手の平を開きながら置くと、


「手、握ってくれない?」


 上目遣いで言ってくる。


「あ、あぁ。それはもちろん」


 もう手遅れだろうが、顔が赤くならないように顔を背けながらも奏の手を取る。

 前までは握るとしても普通の繋ぎ方だったが、今は恋人繋ぎ。

 それもギュッと握られていた。


「なんか、これも恋人っぽいよね」


「繋ぎ方がって事がか?」


「それもそうだけど…………あと、雰囲気?」


「確かに高校生カップルで感じがするよな」


「私たちは正真正銘の高校生カップルだよ~」


「そんな事は知ってるよ」


 そう言うと、刹那、劇場内が消灯され映画の音量が上がる。


「は、始まっちゃうね」


「そうだな」


「やっぱ、暗い場所は苦手だなぁ」


「好きな人はあんまいないとは思うけど」


 話していると、流れてくるのは近日公開のホラー映画の広告。

 不穏なBGMに、不気味な演出。そして興味をそそるようなビックリするシーン。


「ひぃ!」


 その広告に、奏は小さく甲高い声をあげ、俺の肩に顔をうずくめる。

 まだ本編始まってないんだが?広告の段階でこれとなると……………この先が思いやられる。


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