第11話 な~んか見た事あるんだよね~

「やっぱさぁ~?零二くんの横が一番ぐっすり寝れるんだよね~」


「意味分からんわ」


「零二くんの匂い落ち着くし、寝相がいいから抱き枕みたいな?」


「人を勝手に抱き枕にするな。あとお前は寝相が悪すぎるんだよ」


 朝には、天使のような寝顔で俺に抱きついて寝ているが、夜中は最悪だ。

 ベッドに潜りこんでくるかと思うと、最初の内は俺の手を自分に巻きつけて寝るだけだが、熟睡したあとだ。


 手で頭を叩いてくるし、足で体を蹴飛ばしてくるし、寝言で「零二くん大好き」とかクソ可愛い事言ってくるし。

 こちとらそれのせいで全く寝付けない。


「それはいいとしてさ」


 と、椎名は持っていたゴムを目の前に出すと、


「な~んか見たことあるんだよね~、これ」


 部屋の照明に照らしながら、ゴムを半開きの目で凝視する。


「見た事あるのか?」


 それはそうか。いくら無知でも人生で一度や二度くらいゴムは見た事くらいあるか。


「うんうん~、なんか友達が持ってたよ~?」


「ブっッ……………そ、そうか」


 落ち着く為に飲んでいたお茶を噴き出す。


「そうそう~、その時これ何?って聞いてもさ~?「奏はまだピュアのままで居て欲しい」って言われたの」


 そこはちゃんと教えてあげてよ友達!

 流石に友達で高校生にもなって性知識がなかったら普通教えるだろ。俺だった確実に教える。


 ましてや女子だ。なにか無知を裏目に取って悪い男が近づいてくるかもしれない。


「でね?友達はこれを何個使った~とか、これはあんま良くなかった~とか話してたけど私はさっぱりだったよ~」


 ため息を吐きながら手の平を天井に向ける。

 それはそうだ。何も知らない人が用語を聞いても分かる訳がない。


「奏、その友達ってさ―――」


「ん?あ~、沙耶ちゃんとゆずきちゃんだよ?」


「やっぱりそうだよなー」


 その名前に俺は落胆する。

 早乙女沙耶(さおとめさや)と西ゆずき(にしゆずき)。この名前を知らない人はいないだろう。


 なにせ、学校で有名なビッチだからな。

 学校の男子をほとんど喰いつくし、他校にまで手を出す。

 顔も性格も、ビッチという以外は完璧。だからなのか、ビッチなのに異様にモテる。

 そんな2人と奏は仲がいい。


 よく学校で一緒に居るのを見る。

 前から気になってたんだが、なんでそんなビッチ囲まれて、ピュアのままで居られるか謎だ。


 普通なら、そっち側に染まっていくはずなんだが。

 いや待てよ?沙耶が言ってたな。


「奏は零二に任せる」って。「私たちが教えても意味ないから、応援してる」って

 いやいや!こいつらもビッチなんだからその経験を生かして教えてあげろよ。何ピュアのまま鑑賞しようとしてるんだ。


 まぁ、ビッチに染められないのはいいけど。

 奏が男を貪り喰ってるなんか……………想像したくない。


 それに、今でさえモテてるのに、すぐヤれるという男には好都合が含まれると………………さらに想像したくない。


 でも、2人には一般女子高生が身に着けているくらいの知識は教えて欲しかった。

 そっちの方が色々と円滑に進むから。


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