第4話 新人との出会い
日が終わり、モカミと色々喋り込んだ後、思考整理のための睡眠のようなものをとって5時間が経過していた。
「ふー。やっぱりかっこいいよね、オルメリ。しかもライオンタイプなんて、希少なんでしょ?」
寝てても耳に言葉が入り記録されるので、それで目を覚ます。聞きなれない声という事は、昨日おじさんが言ってた新人の子か。
『でも、聞いたことのある声……』
そう思って目を開けると、なんと昨日の天使のような少年がフロントアライアンスの隊服を着てここにいるではありませんか。世の中って思ったより狭いんだな~。
「お、起きたか。オマエの説明は寝てる間に終わったからな。こいつは
おじさん、ボクが起きたのに気付いてたんだ。
『あ、どうも……』
消極的な返事になってしまった。ライブ中ぐらい積極的出来ればよかったのに。
「おはようございます。天使美華です。これからハレオさんのパートナーとして精進することになりました。どうぞよろしくお願いします」
柔和な感じで、いかにも新人らしい挨拶を言われる。こんな事言われるのは初めてだったので、どう喋ったらいいのか分からない。
「……この通り、コイツはちょっとコミュニケーションが苦手気味でな。オルメリにも色々性格とか好みとかあるからな。人間と一緒だ。そうだ、人間と言えばハレオ、お前のアレ、問題なかったら見せたらどうだ? ちょっとはコミュニケーションしやすくなるんじゃないか」
アレとはアイドルボディのことだろう、趣味のものではあるんだけど、まあ、やっぱこのままだとその子も威圧感かんじるだろうし、ボクもあっちの姿の方が喋れる気がするし……。
『分かった。天使さん、改めてあいさつするけど、ちょっと待っててね』
一度繋いだら、程度の差はあれどっちの体にも意識がある。すぐさまアイドルボディの意識の割合を増やし、クレイドルプラントから出て、白シャツとズボンを着る。
「どうもハレオです。初めまして、ではないかな」
彼の顔が呆けた感じになっている。
「もしかして、ボクのこと覚えてませんでした……?」
彼の目が輝いた。ボク両手を握り、ぶんぶん握手してきた。
「まさか、こんなふうにまた会えるなんて嬉しいよ! おじさん、昨日言ってたアイドルの卵、この子だよ!」
「名前が名前だからそうだろうとは思ったけれども、やっぱりそうだったか」
やっぱりってことは、ボクに聞こえない範囲で色々喋ってたってことなのかな。なんだかむずむずする。
「知ってたならちょっとは話題に出してくれても良かったじゃん」
「いや、なんだ。断定は本人がいないと出来ないからな」
「そうそう」
なんか二人とも、妙に仲がいい。
苗字は違うし、そもそもおじさんは結婚してないわけだから……。
「二人って、親戚?」
「ああ。美華は俺の甥だ。昔はしょっちゅうここに遊びに来てたんだけどな、お前がここに入る前だったか」
「だからなんだ」
「ハレオさんも、おじさんと仲がいいですよね。やっぱり2年間もパートナーをやってると、もう兄弟みたいな感じですか?」
やっぱりむずむずする。言葉遣いの問題かな。
「兄弟、というよりかは親子のほうが近いかもね……。あと、敬語はいいよ。君の方が大人だろうし。距離感かんじるとボクの方が喋りづらいからさ……」
「分かったよ。これからよろしくね。ハレオ」
「うん」
片手でしっかりと握手を交わす。ちょっと心が通じた気がした。
「早速で悪いが、ハレオと美華で、相性とかを諸々テストすることになってるんだが、覚えてるよな」
「はい」「う、うん」
データとして送られてきたので知っている。
「じゃあ、早速着替えてきてくれ」
美華は自分の部屋に行き、ボクは服を脱ぎクレイドルプラントに入る。液体内のナノマシンの消費を気にしなかったら服ごと浸かれるけど、無駄遣いはしたくない。
「どんな子かな、おじさんの甥ってことは、おじさん程ではないにしろスペック高めなのかな。いやいや、あんまり期待するのもあの子に悪いな」
オルメリ体に戻り、実機での飛行、格闘、射撃訓練など、ざっと20種目以上、長くてしんどいテストをこなしていった。入りたての頃も似たようなのやってたな。今更思い出した。
「……ねえ」
格納庫でオルメリ体のメンテナンスをしている間、エモーショナルな夕焼けをバックに屋上でおじさんと喋る。人型の体があるって便利。
「どうした?」
「美華ってさ、だいぶおじさんの才能受け継いでない?」
正直びっくりした、特に軍属でもないし年も若いのに、あの成績は異常だ。
「かもな。色んな系統の努力を抜かり無くしてきたからな。お前と違って」
「そういうのは言わなくっていいから」
アニメとかゲームとかをエンタメの教養とすれば、ボクも似たような努力家になるんだけどなー。
「ハレオとおじさんで、なんの話してたの?」
結果を受け取ってきた美華が帰ってきた。彼も夕焼けが映える。
「なに、お前がすごいって話をしてたんだよ」
「はは。それはありがたいのかな」
そしてボクに結果を見せてくる。わざわざ紙で持ってきたぐらいだから、相当嬉しかっらたんだろう。
「ラッキーなことに僕と君の相性は良いみたい。もしおじさんレベルになれるなら、これから忙しくなるかもね。改めてよろしく」
「うん。よろしく」
ラッキーなのはボクの方だ。これならおじさんの頃と同じ感じで仕事ができる。にやけそうになるがそこはオルメリ。表情を出す指令はちゃんと止められる。鼻は擦るけど。
嬉しそうな彼の笑顔を見ながらふと、美華はなんでオルメリのパートナーを目指したんだろうーー。と考えようかと思ったが、趣味の時間を確保できそうな今、急いで格納庫へ戻ることにした。そういうのは後でいくらでも聞けるんだから。
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