年下に告白されたんだが?

 最悪な1日とはまさにこの事だと思う。

 会社では「合コン行ってくるからこれお願いねー?」とキャピキャピしているいい歳した女に仕事を押し付けられて帰ったら推しのイベントをしたかったのに睡眠時間を削って走ることが決定したし。


 それで速攻で仕事終わらせて帰る準備をして外に出たら雨降ってたし。

 今頑張ってその雨の中走ってるし。

 走るなんて何年ぶりだろうか、高校出てから…全くしてないから…考えたくもない。


 一応これでも元陸上部だったんですよ私!

 長距離走れるタイプの子だったんですよ!

 今じゃゼーハー言っててボロボロだけどね?!


「疲れた…」


 とりあえず屋根のあるところにと思って閉まっているお店の前で休憩させてもらう。


 ずぶ濡れで帰るのはもう決定しているというかもうずぶ濡れだし。


「あれ?何してるんですか」

「…君かバイト帰り?」


 ビニール傘を差している制服姿のバイトの少年の姿があった。


「びしょ濡れじゃないですか!タオルあるんでどうぞ!」


 少年は慌ててカバンからタオルを出して私に押し付けた。


「ありがと。タオル洗濯して返すわ」

「大丈夫ですから!それあげます!」

「くれるの?勿体ないなぁ少年。返すからね私」


 これは意地の張り合いなのかなんなのか、大人の余裕を見せたいけど、私にはそんな余裕持ち合わせていなくて。


「少年はおうち帰らなくて良いの?」

「雨で傘ない日放置して帰るのは申し訳ないので、送って行きますよ」

「君…そういうことすると彼女さんになんか言われるんじゃない?」


 私がからかうようにして言うと少年はボッと効果音が付きそうな勢いで顔を赤くした。


「い、いません!やめてくださいよからかうの?!」

「あれ?そうなの?君みたいな優しい子なら1人や2人いるものかと」


 なんか申し訳ないなここまで言わせるの。


「じゃあ貴方はいるんですか」

「いるわけないって、いたらゲームにウン万課金してないって」


 私は自分で言ってて恥ずかしいと思いつつケラケラと笑ってみせる。


「あの…年下は恋愛対象的にどうですか…?」

「んー犯罪になりそう」


 なんかなかったっけ?未成年関係で捕まるやつ?

 誘拐とかって勘違いされたりするの怖いし、あと世間体とか年の差って結構あとから来るんだよな。


「俺ダメか…」

「君がなんでダメなの?お姉さんに言ってみ?」


 タオル貸してくれた恩返しに聞いてあげようじゃないかこの恋愛経験ゼロが。


「いや貴方なんですけど俺好きなの」


 何言ってんだこいつみたいな顔をしている少年に私は驚いて口を開けることしかない。


「おー、いつの間にそんなことが…」

「で、どうですか?俺?」

「顔はいいと思うよ性格も君私以外の子に言ってみ?すーぐ恋人できるから」

「俺は、貴方が良いんです!」


 もう言うだけ言ったれみたいな感じになってるみたいで顔真っ赤っかにして言っている。

 私もそれにつられて冷たかったはずの顔が熱くなっている。


「あ、あのね少年…君まだ若いんだからやめときな?こ、こんなおばさん」

「俺はそれでも好きです大好きです!」

「なんでそんな好きなの?」

「俺がバイト初日の時にレジ慣れてなくてその時に慌てなくて良いですよって笑ってくれてその笑顔に…一目惚れを…しました」


 そういえばそんなこと言ったなやけに可愛いバイトいるじゃーんとか思って言ったなそういえば。


「あ、ありがとうございます?」

「あの…連絡先とか…」

「了解でーす…」


 とりあえず私と彼はLINEを交換した。


「佐藤さんこれからも俺頑張るんで!いつか貴方を養える位の経済力持つんで!」

「え、っと…?まず恋人にすらなってないからな少年」


 私本当に犯罪者になってしまうのではないかと思いながら少年…鹿島隼かしまはやてくんの顔を見ていた。


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