第3話 写眼覚醒
新たに加えた
まだまだ万全とは言い難いが当面の間は凌げる数だろう。これ以上の数を増やすにはこの地を離れ、別の土地で群れを探さなくてはならないが、スカーはこの地でやることがある。その為別の手段をとることにした。
まず初めに小さな村や一軒で酪農をおこなっている家などを狙って女を攫い、その女たちに
本来
そうした中で弱い者は死に、強い者が生き残っていく。
スカーは生まれてきた子供に教育と訓練を施すつもりでいる。
体格にしても将来的に
ともあれ、どうするにしてもまずは女が必要だった。そこで十人近く攫ったのだが、工場としての実験を行いつつも並行して対処しなければならないことがある。
近いうちに攫った女たちを探しに冒険者が来るのは間違いない。
そこでスカーは常に交代で見張りをさせていた。しかも、洞窟の入口に立哨させるのではなく、入口から100メートルほど離れた草むらや木々の上などに身を潜めさせた状態で。
案の定、夜に報告が上がって来た。冒険者が現れた、と。その数五人で全員が女。
冒険者たちは日が昇り始める早朝に洞窟へ侵入してくるだろうと予測する。
夜が明けるまではまだ時間がある。スカーは前もって準備していたことの最終確認をする。
まず最初に目立つように捕まえた女を
生かしている女を使った場合、その女を救出した後、一度洞窟の外へと連れ出すかもしれないからだ。スカーとしては一気に洞窟の奥へと誘い込みたい。死体ならばそのまま放置して進むだろうし、心情として怒りを覚えて少しでも冷静さを失うことを期待してだ。
次に鋭く尖らせた太い木の枝を仕込んだ落とし穴。古典的だがうまくいくとスカーは思っている。そもそも
そして牽制として天井付近の表面を傷つけて、パラパラと砂利などが落ちやすく細工しておく。
複数人で構成されている冒険者であれば、ほぼ間違いなく
そして思惑通り今、五人の女冒険者たちがいる。
「――何ヵ所も串刺しで今すぐ
その叫びを耳にしてスカーは反射的に
女司祭は叫ぶと返事もまたずに神への祈りを捧げる。徳の高い司祭が使うことの出来る奇跡、
その光景を見ていたスカーの瞳が妖しく輝き、本人は気づかないが両の瞳に逆五芒星が浮かびあがる。
そして視た。
女司祭の周りを囲むような何かを。
スカーの知識では、それは光り輝く幾何学模様にも見知らぬ言語の筆跡にも思えた。
それらの光の輝きが消えると同時に文字も消え、横たわるエルフの身を淡い緑の光が包み込む。
突然、理解した。
神への冒涜に等しい
「ダメッ! 間に合わなかった――いえ、まだですッ!! 蘇生の奇跡がまだありますッ」
「なッ! 待て、メイア! 動けなくなるぞッ!! 温存し――ごあぁぁぁぁ!!」
「――我らが母にして慈愛と豊穣を司る大地母神よ。ここに勇敢なる女性の御霊をお戻しください――
再び逆五芒星の瞳が
今度は先ほどと同じような文字に加えて、女司祭の体から淡いピンクの陽炎のようなものが洞窟の天井を突き抜けて昇っていく。
しばらくしてその陽炎がフッと消えたかと思うと、女司祭はその場に崩れるように身を横たえ、その直後、女エルフに細かな光の粒子が降り注いでその体に吸い込まれていくと「かはっ」と吐血する。
スカーにはわかる。奇跡は成ったことが。しかしながら
「――おい、ケニファ! ここまでだッ! 逃げるぞ! ケニファ!!」
「に、逃げるって三人を置いてですか!? そんなこと――」
「もう無理だ! アタシたちだって全力で逃げに徹しないと終わっちまうぞッ!」
逡巡する女魔法使いに激しい言葉で脱出を促す女盗賊。しかしもう遅い。出口へ向かう通路はすでに
逃げられないよう痛めつけてから捕らえろと命じると、スカーは虫の息で横たわる女エルフと
「――MU、MU……HYU……」
喉の調子を整えつつ手近にいた者に命じ手足を拘束し、猿轡をさせた女エルフにスカーは手をかざす。
「ME……HI、HI……。
治癒の奇跡は成った。
確信は現実となって目の前で起こる。
女エルフの身を淡い緑の光が包み込み、ゆっくりと傷口が癒されていく。
その様子を見てスカーは口元をニィィと歪ませる。
スカーは魔法や神秘を写し取る"写眼"を手に入れたのだ。
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