第2話 五人パーティー
野で一匹で生きていくなど不可能だ。たまに見かけることがあるとすれば、それは群れからはぐれた一匹だろう。故に数を増やす方法は二つ。群れの巣を探すかヒューマンやエルフ、ハーフエルフなどの女に産ませるかだ。
種として
将来的には生産工場を創設して数を増やすことも考えなければならないが、今はまだ時間をかけていられない。
手勢にした
今いる洞窟は手狭だ。そろそろ拠点を変えても良い頃合いだろうと思っていた。
手勢の中から伝令役を含め三匹ほど、身軽な
一つは群れを統率していたのが
それぞれに
『
同人ゲーム『鬼畜プレイヤー』ではMP9999とINT999の理論値が付与されるレアアイテム。
ゲームではゲーム内時間で午前0時になるとMPは全回復し、INTが高いほど魔法攻撃力が上がり、覚える魔法の種類が増えるので、実質無制限のMPとほぼすべての魔法が使えるようになる。
スカーは拳大の紫水晶のようなその魔言の石を――吞み込んだ。
❁ ❁ ❁
「――くそッ!! 何だってんだこいつら!
「フェフ、気をつけろッ! こいつら、統率されてやがる! どこかに
「今、落とし穴から引き揚げたわッ! ――ダメッ! ガイラッ! 危険な状態よ! 何ヵ所も串刺しで今すぐ
「!? よしッ! フェフ、ケニファ! 回復の時間を稼ぐッ! 全方位に牽制をッ!!」
周りを取り囲んでいる
「この状態で神の奇跡って言ったって――」
「ガイラッ! 天井からパラパラと小石が落ちてきています! 衝撃の強い魔法は使えませんよッ!」
横たわるパールと、そばに
無茶でもやるしかない。
五人はそれなりに名の知れた冒険者。彼女たちは"
戦士のガイラ・マラライ。
魔法使いのケニファ・カーライル。
司祭のメイア・チルチチ。
精霊使いのパール・ルゥーイット。
盗賊のガ・フェフ。
精霊使いのパールはエルフだが、他の四人はヒューマンという構成だ。
彼女たちの装備の胸元には紅の椿が彫られ、或いは刺繍されている。その椿の上には三つの☆マークがあり、彼女たち"紅椿"が三等星の等級の冒険者であることを示していた。
冒険者の階級は一等星から五等星まであり、三等星ともなれば一流の証である。ちなみに五等星――最等級の冒険者チームは3組しかなく"
そんなガイラたち五人は、とある領主から令嬢救出の依頼を受けた。何者かに攫われたという。
冒険者ギルドからの情報(有料だったが)や、近隣の村や町などの聞き込み調査から、最近になって
また、領主の令嬢だけでなく村娘も数人、行方不明となっていることも。
総合的な判断の結果、五人とも近くに
本来なら一度軽く潜って洞窟内を調査したかったが、攫われてから日数が経過していたことと、令嬢だけでなく村娘も攫われている可能性もあることから強行潜入することにしたのだ。
三等星の冒険者といえど、どこかにたかが
盗賊のフェフを先頭に洞窟内を進んで行き、しばらくして宿二部屋分ほどの空間に出たところでそれと遭遇した。
魔法の灯りによって暗闇から現れたのは二匹の
ヒューマンにしては長く、エルフにしては短く丸みを帯びているその特徴的な耳だけがやけに鮮明に見て取れた。
「!?」
一早く反応したのはエルフのパールだった。その瞳には嫌悪と怒りに彩られている。
素早く
「逃がさないわッ!!」
パールはそのまま
「待てッ、パール! 先走るなッ!! ――チッ。私たちも行くぞ!」
ガイラの静止の声も聞かず洞窟の奥へと先行したパールに続くべく、残りの仲間たちに声をかける。
足元に横たわる女性――ハーフエルフの娘は一瞥して分かった。すでに事切れている。
「――なんという冒涜……」
司祭であるメイアがその蛮行に対して怒りを込めて呟く。
娘の状態からして死亡したのは数日前と思われる。つまりは先ほどの
それ故、パールもまた怒りに我を忘れたのだろう。彼女はハーフエルフに偏見はなく、同族と変わらないという考えを持っていたから。
すぐさまパールを追ったガイラたちは開けた場所に出た。そこは王城や貴族の屋敷などで行われる舞踏会ホールほどに広がった空間。が、しかし。パールの姿が見当たらない。
「ガイラッ!」
フェフの鋭い声。視線のその先には昏い穴が。ちょうど人が入るほどの。
「ケニファ! 照らせッ!!」
無言でうなずいたケニファは、高い天井へ向けて
囲まれていた。その数、30匹は下らない。万全の状態ならば例えその数が50であったとしても
ガイラの焦りをよそに、囲まれている気配の中から一際大きな気配が前に出てくる。その数二つ。
強い。ガイラは瞬時に判断する。
どちらが相手でも一対一なら負けはしない。しかし、この2匹を同時に相手をするとなると、仲間からの十分な支援がないと難しい。つまり今の現状からすれば絶望的だということになる。
そこへメイアの悲痛な叫びが追い打ちをかける。
「ダメッ! 間に合わなかった――いえ、まだですッ!! 蘇生の奇跡がまだありますッ」
「なッ! 待て、メイア! 動けなくなるぞッ!! 温存し――ごあぁぁぁぁ!!」
この状況にガイラも冷静さを欠いていたのだろう。敵から目線を外し背後を振り返るという普段なら決してしないミスを犯す。
その隙を突いて
いかに
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