3話 新入生のみなさま
ついさっき書庫前の回廊でぶつかった少女、ビブリア・クレメンティア・カーラ・イモ―タは、15歳の少女にしては低いが会場の後ろまで良く通る声で一連の代表挨拶を立派に終えた。その後長い足を真っ直ぐに揃えて正式な敬礼を行い、演壇を降りた。
「あの代表の方ってまさかあの元老院議員のクレメンティウス一門の?」
「恐らくね。ご当主のクレメンティウス・カールス様のご令嬢がビブリア様と仰ったはずよ。でもまさかわたしたちと同年代で、しかも同じ学校に入られるなんて」
「間違いないわ。わたし新聞であの方のお顔を拝見したもの。でも実際のお姿とモノクロ写真とではまるで別人だわ」
マイナの野生の直感は当たっていたようで、どうやらあの代表の少女は只ならぬ身分の持ち主らしい。
元老院議員というものが何であるかを彼女は知らなかったが、多くの生徒たちがビブリアを話題にして盛り上がったり、信じられないといいったような表情をしているのを見るに、少なくとも彼女の実家の事を知らぬ者はいないほどの知名度であるようだ。
やんごとなきビブリアの演説はよほど効いたらしく、
ウォロ町長の挨拶、連邦涵養官代理の挨拶と主神ユーピテルと知恵の神ミネルウァへの祭儀が済んで式典の儀礼的な箇所を終えると、式はいよいよ実務的な内容に入っていった。
副校長に当たる男が本校で主に学ぶ予定の科目を説明し、寮長は寮施設の内訳とその運用状況を説明した。
最後に行われたのが寮の部屋割りのくじ引きである。入学当日に部屋割りを決めるなんて余計な混乱を招くだけであると思うのであるが、副校長曰く、くじ引きは裁定を神に委ねるという事であり、これから3年間過ごす仲間を決めるのに最良の手法であるそうだ。
マイナは特別信心深いという訳ではない。しかし故郷から遠く離れた見知らぬ地に来て、肝心の学校の運営が心もとないという今の状況では神にも頼りたくなる心境であった。それは他の生徒も同様なようであるようで、みな緊張した面持ちでぅ字引の列に並んだ。
3年間をともにする相手を神に委ねる、それは即ち運命に導かれると言っても過言ではないのではないか、とするとわたしの相手は誰になるのだろう。マイナの脳裏には一瞬ビブリアの像が浮かんだが、同室になる確率が2/2000という著しい低確率であることを思い出し、すぐにそれを打ち消して列に並んだ。
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